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第9話

自由登校でいいとか言われてたけど、俺は普通に学校へ通った。 途中で帰ったのは最初だけで、普通に授業も受けられてる。 ただ、それは・・・。 「「ナオ」」 休み時間の(たび)に会いに来る、双子のおかげでもある。 「チョコやる。くちOpen(あけろ)」 「んぁ」 「次体育でしょ。僕のジャージ着て」 「ジャージなら自分の・・・あれ、ない・・・なんで・・・?」 通学バッグに入れたはずのジャージがない。 体操服は入ってんのに。 おかしいな、絶対入れたはず・・・。 「ほら、立って。着替えないと」 ナミに言われ、納得いかないまま立ち上がる。 制服を脱ごうとしたら、いつも通り双子が脱がせにかかった。 「もお、自分で・・・」 「いいからじっとしてろ。ナオ、Stop(とまれ)」 「コマンド使うなあっ!」 「はいはい、ボタン外すね」 結局、双子の手によって着替えさせられ、仕上げにナミのジャージを着せられる。 ・・・ナミの匂い。 「(すそ)(まく)っとくぞ」 「袖は・・・可愛いからそのままでいいか」 くそ、裾や袖が余るのムカつく。 ナミのジャージを着て体育の授業を受けていると、体育教官が声をかけてきた。 なんだろ、真面目に授業受けてんのに・・・。 「青木(あおき)、無理はするなよ。そのジャージ・・・ああ、茜霧(あかぎり)に借りたのか。それならいい」 気遣われた・・・。 いつもは厳しい体育教官に。 ジャージだって、袖余ってんの注意しようとしたはずなのに、それならいいって・・・。 俺がSubΩだって事も、チョーカーとカラーを茜霧の双子に着けられてるって事も、既に教師たちには伝達されてるらしい。 あの厳しい体育教官でさえ、SubΩ相手では優しくなるのか・・・。 ちょっと得した気分だ。 授業を終え、教室に戻ったら当たり前の顔して双子が待っている。 お前らほんと・・・。 「お疲れ。怪我しなかったか?」 「してない」 「ナオ、着替えて。はい、ばんざーい」 「子ども扱いすんなっ」 双子の手で制服に着替えさせられ、頭を撫でられ、席に着く。 ・・・あっ! 「ナミ!嗅ぐな!」 俺が脱いで返したジャージに、ナミが顔埋めてる。 変態かお前は! 「いい匂いだから思わず・・・」 「次は俺の着せるからな」 「ばか!早く教室行けっ!」 クラスメイトが見てんのに・・・ほんと恥ずかしい・・・。 双子が去り、机に突っ伏していると、前の席に座った須藤(すどう)が振り返って声をかけてきた。 「青木」 「んー?」 「別に恥ずかしがる必要ないぞ。あれは救命行為だと思え」 「きゅーめー?」 俺が死亡率の高いSubΩだからか? だからって、あれが救命行為だなんて誰も思わないだろ。 「あーゆーのは家だけで充分・・・」 「・・・え、もう同棲してんの?」 「どっ!?・・・ちが、だって、親が海外で家が隣で、だから前もうちに住んでて、それで・・・っ」 「わかった、落ち着け、お幸せに」 「違うってば!」 須藤に揶揄われるなんて・・・最悪・・・。 ─────── 「青木くん、ちょっと話があるんだけど」 「・・・んぇ?」 ホームルームが終わって、帰り支度をしていた俺にクラスメイトの宍戸(ししど)が話しかけてきた。 俺に話? 「先輩たちが来る前に、ちょっと一緒に来て」 「え・・・いいけど・・・」 先輩たちって・・・ナギナミの事か? 双子が来る前にって・・・あいつらに聞かれるとまずい話? とりあえず、須藤に「双子が来たら教室(ここ)で待っててって言って」と伝え、宍戸に付いて行く。 連れて行かれたのは美術準備室だった。 確か、宍戸は美術部だったような・・・。 「話って?」 「あの・・・青木くんって、SubΩなんだよね?」 「・・・それが?」 俺はNormalβだと思ってたし、未だに信じられないけどな。 「その・・・実は、僕のお兄ちゃんが、Domαなんだ」 「・・・え?」 宍戸、兄貴いたの? いや、それより、Domαだって? だから、なに・・・。 「お兄ちゃん、海帝(かいてい)高校の3年なんだけど・・・今度、会ってくれない?」 「え、なんで・・・?」 「だって、茜霧先輩はNormalαだよ?青木くん、先輩と番になってる訳じゃないよね?だったら、Domαのお兄ちゃんと会って、もしかしたら運命感じるかもでしょ?」 運命・・・? え、なに、ちょっと言ってる意味、わかんない。 なんで俺が宍戸の兄貴と会って運命感じんの? 「青木くん、茜霧先輩の事・・・好きなの?」 「はあ!?な、なに言って・・・俺たちは幼馴染ってだけで・・・」 「だったらお兄ちゃんに会おう?きっと好きになるよ!だって、DomαとSubΩだもん!」 好きになる? 俺がSubΩだから、Domαの宍戸兄を好きに? そんな・・・。 ────バン!! 「おい!ナオに変な事吹き込むな!」 「ナオ、大丈夫!?」 ドアを破壊する勢いで、双子が現れた。 教室で待ってろって言ったのに・・・。 「ナオ、Come(おいで)」 ナギにコマンドで呼ばれ、その腕の中におさまる。 別に具合悪くなんてなってな・・・。 「宍戸くんだっけ?僕たちのナオにくだらない話するのやめてくれる?ナオのαは僕で、Domはナギだ。Domαが現れたところでそれは変わらない。ナオが僕たち以外に運命なんて感じる訳ないだろ?」 (うなじ)がビリビリする。 グレア・・・αの威嚇フェロモンだ。 俺はナギによしよしされてるから耐えられてるけど、宍戸は・・・。 「・・・すっ・・・すみ・・・ません・・・っ」 今にも倒れそうじゃん。 やばい、やり過ぎだって! 「な、ナミ、落ち着け、宍戸が気絶する」 「ナオ・・・ごめん、恐かった?」 いや、恐がってんの俺じゃなくて宍戸だって。 宍戸の様子を確認しようとしたら、ナミが俺を抱き上げた。 まだちょっと、ビリビリするフェロモン出てるな・・・よーしよし、落ち着けナミ、いいこいいこ・・・。 「お前の兄貴には悪いけど、ナオは俺たちのもんだから。俺たち、ナオが生まれた時からずっと一緒にいんの。何があっても離れないから、諦めろ」 ナギが宍戸に言って、俺を抱いたナミと美術準備室を出る。 そ、そこまで言わなくても・・・。 宍戸だってたぶん、良かれと思って言ったんじゃないか? 「ナミ、下ろして、歩ける」 あと、いい加減ビリビリするフェロモン止めろ。 「ナオ」 「なに?」 「ナオのαは僕だ。他のαになんて渡さない」 「な・・・っ」 なんでそんな、はっきり断言すんだよ。 俺は・・・。 「ナオのDomは俺だ。他のDomのコマンドなんか聞くな」 ナギまで・・・。 「・・・い、今はそうかも、だけど・・・ナギナミだって他に・・・運命、感じる相手・・・現れるかも・・・」 「「ナオ!」」 びくっと身体が硬直する。 双子のグレア。 すごい、怒ってる・・・。 「ナミ、家までもつか?」 「・・・ぎり。今すぐ噛み付きたい」 「タクシー呼ぶ」 またタクシーで帰んの? 俺は歩けるのに・・・って、身体、動かない・・・? なに、これ、どうなって・・・。 「ナオ、帰ったらお前、抱くから」 「発情してなくても関係ない。ナオは僕たちのモノだって、わからせる」 ・・・は? 嘘だろ、そんな急に、なんで? やばい、恐い・・・のに、逆らえない。 俺、どうしたらいいんだ・・・。

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