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第13話
「ナオ、体調は大丈夫?」
ナミの掌が俺の額を撫でる。
ちょっと冷たくて、気持ちい。
「ブレザーだけじゃ寒いんじゃねぇの?俺のカーディガン下に着とけ」
制服のブレザーの下に着てた自分のカーディガンを脱ぎ、俺のブレザーを脱がせてからそのカーディガンを着せ、ブレザーもきちんと着せてくれるナギ。
あったか・・・ナギの匂いする・・・袖余るのムカつく。
「あ、ミルクココア味の飴買っておいたよ」
俺が好きな、ちょっと高い飴だ。
俺に持たせるとすぐに全部食っちゃうから、ナミが隠し持ってるやつ。
「ナオ、くちOpen 」
ナギのコマンドでぱかっとくちを開ける。
まあ、コマンドじゃなくても、飴欲しいから開けるけど。
「んん・・・やっぱこの飴うまぁ・・・ほら、双子 もう自分たちの教室行けって」
今日の双子 はいつもより更に執拗 く世話を焼いてくる。
とっくに予鈴鳴ったぞ。
「少しでも具合悪くなったらちゃんと連絡しろよ?」
「ん」
「ほんとに大丈夫?」
「ん」
双子が心配してる理由はわかる。
昨日の双子の暴走で俺が疲弊してるから。
まあ、あの後は普通に寝たし、なんならいつもより快眠だった。
双子に挟まれて寝たからか、俺が疲れ切っていたからかはわかんないけど・・・。
「はよ、青木 」
「はよ、須藤 」
いつも通り、双子が教室を去ってから声をかけてくる須藤。
そんなに双子が恐いのか?
「昨日、あの後ナニかあった?」
「察してんなら聞くな」
昨日、双子が美術準備室に現れたのは須藤 の差金 だったらしい。
俺と宍戸 が教室を出た後すぐやって来た双子に、須藤が「青木が美術部員に拐 われた」と伝え、双子はダッシュで追いかけて来た、と。
一応、すぐには準備室に入らず様子を伺おうとして、宍戸の「お兄ちゃんに会おう?きっと好きになるよ!」って言葉にぶちギレて突入しました、とか双子が言い訳してた。
「そういや、宍戸は?あいつ大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫。ふらふらしながら教室戻って来て、茜霧先輩たちのグレア浴びちゃったーとか興奮しながら話してたし」
「なんだそれ・・・」
心配して損した。
そういや、宍戸ってNormalβだったっけ?
グレアで体調悪くなるとかはないのかもな。
「で、青木は妊娠でもしたのか?」
「にっ!?してねぇよ!」
「そっか。茜霧兄弟の過保護が加速してたから、てっきり孕んだのかと」
「黙れ・・・」
妊娠だの孕むだのと、恥ずかしい事言ってんじゃねえよ。
発情期来てないし、1回で妊娠なんかする訳ないだろ。
・・・・・・いや、1回ではなかったけど。
俺、大丈夫だよな・・・?
高1で妊娠とか・・・さすがにないだろ・・・。
そんな事を考えてたら、もやもやと不安感が膨らんできた。
やば・・・これ、ほっとくと頭ぐらぐらしてきて倒れるやつだ・・・。
授業は始まっていたがやむを得ず双子に連絡をする事にした。
いつものチャット画面を開く。
さすがに双子 のアイコンはアクティブになってない。
授業中に連絡すんの初めてだけど、双子 ちゃんと反応すんのかな・・・。
机と膝の間で、とととっとスマホ画面をタップしながらメッセージを打つ。
とりあえず「なんか不安」と。
メッセージが相手に送信されて約2秒後、双子のアイコンがアクティブに。
メッセージ送っといて言うのもなんだけど、双子 ちゃんと授業に集中してないだろ。
「わかった」「すぐ行く」と返信があり、俺はそれだけで少し気分が改善された。
反応があるだけで良かったのに、わざわざ来なくても・・・。
───コンコン
あ、来た、速 ・・・。
「「失礼します」」
教室に入り、教師と少し話してから俺のとこへ来る双子。
鞄持ってる・・・って事は、このまま帰るつもりか。
あー・・・連絡したの、大袈裟だったかもな・・・。
「ナオ、Come 」
「帰ろうね」
ごめん、ちょっと連絡してみただけなんだ。
そんな、早退する程、体調悪い訳じゃない。
でも、連絡したら双子 が来るってわかってたのに、連絡しちゃった。
おいでって、コマンド出されてるのに、身体が動かない。
双子のとこに、行く資格がない、みたいな気がして、立ち上がれない。
せっかく来てくれたのに、俺、なにやってんの。
あ、やばい、なんか、どんどん申し訳なくなって・・・。
「「ナオ!?」」
俺の視界は暗転した。
───────
頭が痛い。
寒い。
でも・・・手だけあったかい・・・。
「・・・ん・・・」
「ナオ?」
「目ぇ覚めたか?」
どこだ、ここ?
やたら景色が白い・・・病院?
「おれ・・・」
「学校で倒れたんだよ」
「ごめんな・・・サブドロップなんかさせて・・・」
ああ、俺、サブドロップしたんだ。
ナギ、そんなしょんぼりすんなよ。
ナミも、泣きそうな顔すんなって。
「ねぇ、ここ病院?」
「そうだよ。検査した病院」
バース・ダイナミクスのか。
ここまでどうやって来たんだろ。
まさか、救急車とか・・・恥ず・・・。
「救急車には乗ってねぇぞ。養護教諭 の車で来たんだ」
あ、そおなんだ、良かった・・・いや、先生に迷惑かけたな。
今度謝りに行かないと・・・。
「車からベッド までは、僕が抱っこして来たよ」
「・・・そりゃどーも」
「帰りは俺が抱っこしてやる」
「自分で歩くって・・・」
さっきから唯一あったかい手は、ナミとナギに握られてる。
もっと・・・あったかいの、欲しい。
「起こして・・・」
「起きて大丈夫?」
「まだ横になってろよ」
過保護加速中の双子。
今は横になってるより、必要な事があんの。
「起こせってぇ・・・」
「はいはい。ほら、これでいい?大丈夫?」
「なあ、無理すんなって・・・」
「ん!」
「「ん?」」
ナミに起こしてもらい、両手を双子に向かって広げる。
双子はなんだかわかんないみたいで、少し戸惑ってた。
・・・おい、わかるだろ、なにして欲しがってるか。
「・・・なあ、これって」
「・・・抱っこの催促 、だよね?」
「まじか!ナオのだっこだっこ、何年ぶり?」
「10年ぶり!またしてくれるなんて嬉しい・・・」
なに盛り上がってんだよ。
いいからさっさと・・・。
「ナオぉ!可愛い!」
「ほんとごめんな、不安にさせて!」
双子にがばっと抱き付かれ、俺は身動きがとれなくなる代わりに、欲しかった温もりを手に入れた。
・・・はぁ・・・やっぱ落ち着くな・・・これ。
俺がふわふわしてきて、ちょっと体温上がってきた頃・・・。
「失礼します、青木さんどうです・・・か・・・」
「・・・・・・っ!?」
「「あ、先生」」
担当医に恥ずかしい所を見られ、俺の日帰り入院はいろいろ、終わった。
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