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第15話
倒れた翌日、土曜だったのでアラームも鳴らず、好きなだけ寝てようと思ってたんだけど・・・。
「ナオ、起きて。朝ご飯だよ」
「もう8時過ぎてんぞ、起きろ」
双子 は朝が早い。
何時か知らないけど早く起きて、いつもランニングとかしに行ってんのは知ってる。
今日は俺と一緒に寝てたから行かなかったみたいだけど。
「んん"ー・・・」
「あ、これ起きないつもりだ」
「なら今朝はベッド で運動するか?」
部屋 で運動?
筋トレでもすんの?
いいけど、静かにやってくれ・・・。
「いいね・・・と言いたいとこだけど、ハルカさんとソウマさんに見つかったら今度こそ一緒に寝かせてもらえなくなるよ」
「それは困るな、ナオが」
なんで筋トレ見つかると俺と寝られなくなんの?
俺の安眠を妨害するからか?
双子 の筋トレってそんな煩いのか・・・。
「ベロちゅーまでにしとくか」
「そうだね」
「こら!なんの話だ!」
目ぇ覚めたわ。
運動ってまさか・・・ふざけんなよ?
「ナオ起きた?顔洗おっか」
「ちゃんとドライヤーかけたのに、なんで寝癖付くんだよ」
寝癖 については俺も知りたい。
別に困らないからいいけど。
ナギが直してくれるし。
「ちょっと髪伸びてきたな」
「後で切ろうか」
「ふぁ・・・ぁふ・・・」
髪を弄 られて欠伸 が出る。
洗面所で顔を洗い、ナギに寝癖を直してもらいながら鏡を見ると、確かに髪が伸びてきたな、と思う。
俺の髪は中学の頃から双子が切ってる。
その前はセナさんが切ってくれてた。
俺は床屋とか美容院とか、行った事ない。
「ナギナミは美容院行ってんのに・・・」
「え?」
「ナオ、他の男に髪触らせる気か?」
は?
え、そこ気にして双子 が切ってたの?
別にいいじゃん、髪切りに行くくらい・・・。
「絶対だめだよ、ナオ。僕たち以外に髪触らせるなんて」
「俺たち以外に切らせるくらいなら、そのまま伸ばせ」
「なんでだよ・・・もぉ、いいよ、双子が切って」
「「当然」」
当然って・・・ほんと俺の世話すんの好きだな・・・。
「おはよう、ナオ。体調はどう?」
「おはよ、ハルカさん。んー、もおちょっと寝たかった」
「ナオは相変わらず寝汚いな」
「ソウマさんだってよく寝坊するじゃん」
1階のダイニングに降りると、ハルカさんはコーヒーを飲みながら新聞を読み、ソウマさんはホットサンドを焼きながらサラダを用意してくれてた。
実はあんまり料理が得意じゃないソウマさんだけど、ソウマさんの作るホットサンドは旨い。
「ほらよ、残さず食え」
「中身少なめにしてくれた?」
「我儘ちゃんめ。ナオ のだけ控えめにしといたよ。飲みもんは?牛乳?」
「うん」
ホットサンドの中身はコンビーフとキャベツとチーズ。
旨い・・・けど・・・。
「・・・はひっ」
「あっ、ナオ大丈夫?」
「ちゃんと冷まして食えよ」
いつも通り俺の左右に座った双子が、口ん中火傷した俺を構い始める。
チーズとコンビーフの油が熱くて・・・とりあえず牛乳で応急処置・・・。
「ちょっと待って・・・はい、あーんして」
ナミがホットサンドをひと口大に千切り、ふーふーと冷ましてから俺の口に運ぶ。
前は子供扱いすんなって文句言ってたとこだけど、腹を括った今になっては楽でいいやって思う事にしてる。
「双子 はナオが居ないとだめなのは知ってたけど、ナオも双子が居ないとだめなんだねぇ」
無抵抗で世話を焼かれる俺を見ながらハルカさんが言う。
別に、そんな事ないよ、居なきゃ居ないで自分で食うし。
寝る時はたぶん必要だけど・・・。
「そうなるように、双子に育てられたからじゃね?セナとハヤテに申し訳ねぇよ・・・」
ソウマさん、俺って双子に育てられたの?
歳ひとつしか違わないのに?
「俺たちのナオなんだから、俺たちが育てんのは当たり前だろ」
「セナさんとハヤテさんも黙認してくれてたしね」
俺の両親はこの双子に大事な息子を委ねてしまったのか。
育児放棄だ・・・とは言わない。
双子の向こう側から、双子ごと面倒見てくれてたの知ってるし。
「ナオ、くちOpen 」
俺が避けていたサラダを食わせにかかるナギ。
コマンドを使われては口を開けない訳にはいかない。
「んぁ」
「今日はどうする?ナオの体調次第だけど、やりたがってたゲームの発売日だから、ダウンロードして遊ぶ?」
「んんっ!・・・んぅ、んんっ!」
サラダを咀嚼しながら返事をする。
双子にはこれで伝わるはずだ。
「いいけど、夜はちゃんと寝ろよ?」
「んぐ・・・ぇえ?明日日曜 なのにぃ?」
サラダを飲み込んで、ナギに抗議する。
早寝早起き反対!
朝までゲームさせろ!
「ナオ、昨日倒れたの忘れた?病院で安定剤点滴したけど、そもそもナオはバース・ダイナミクス用の薬が効きにくいんだからね?」
「・・・わかったよ、日付変わる前には寝る」
そう約束して、俺と双子は青木家へ移動しゲームをする事に。
ゲームしてる間、ハルカさんが来て、ナギが破壊した俺の部屋のドアの状態を確認して行った。
明日、双子の部屋に入れるベッドが届くから、それの搬入組み立てと同時進行でドアも直してもらうって。
いざって時のために、頑丈な鍵付きのドアにしといてって頼んだんだけど・・・。
「関係ないぞ」
「鉄格子にしてもこじ開けるつもりか?怪力ナギ」
「違うよ。ナオは僕たちと新しいベッドで寝るんだから、ナオの部屋の鍵が頑丈になっても関係ないって事」
「あー・・・」
確かに。
でも、また無体を強いられるような事があれば逃げ込めるし、鍵が頑丈なのに越した事はないよな。
・・・ナギが壊せない鍵だといいけど。
「ナギ、ナオの前髪が目にかかってる」
「ちょっと待ってろ」
リビングの65V型テレビにゲーム機繋いで遊んでたら、ナギが立ち上がって2階へ上がって行った。
今はゲームしてるから髪切るとか後にしてよ?
「これ、良くね?」
「うん、可愛い。ナオに似合うね」
戻って来たナギの手には、茶色のクマが可愛らしいヘアクリップ。
・・・なんでナギがそんなもん持ってんの?
「おい、俺はそんなの着けないからな」
「あ、ほら、集中して?撃たれるよ?」
「あ・・・っ」
「そーそー、ゲームに集中しとけー」
画面に向き直り撃ち返していると、ナギがさっと俺の前髪を上げてクリップで留めた。
俺の頭にクマちゃんが・・・。
「・・・あ、でも視界が良くなった」
「それは良かった」
「他にもあるから、日替わりで着けるか」
いえ、結構です。
後で前髪も切ってくれれば、それで。
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