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第16話

日曜の午後、双子(ナギナミ)のベッドが届き、俺の部屋のドアが修理された。 自分の部屋の鍵が頑丈そうなのになったのを確認してから、双子の部屋に新しいベッドを見に行く。 「で・・・っか」 「所謂キングサイズってやつだな」 「へー」 「僕たち身体大きいから、ベッド広くなっても密着して寝ようね」 「双子で密着してろ」 「ナオ、俺の上で寝んの好きじゃん」 「枕にするには硬いけどな」 「僕の上の方が好きだよね?」 「どっちも同じ硬さだって」 因みに、昨夜は青木家(こっち)の双子の部屋で寝た。 同じ部屋で寝られれば落ち着くからって言って俺がナギのベッドで寝て、双子はナミのベッドで。 恨めしそうな顔しながら、兄弟仲良く横になってたのはまじでうけたな。 ・・・まあ、朝起きたらなぜか同じベッドで、ナミの上にうつ伏せになってナギにホールドされた状態で寝かされてたんだけど。 「あ、そうだ。セナさんとハヤテさんに新しいベッドの写真送っとこ」 そう言ってナミがスマホを出した。 「ナオ、ちょっと寝っ転がってみ?」 「おうっ!」 ナギに言われ遠慮なく、新品のベッドに飛び込む。 ・・・おお! ふかふかぁ・・・広ぉ・・・すげー! 「泳げるっ!」 「「可愛い」」 双子がアホな感想言ってる。 無視して広いシーツの海を泳いでいたら・・・。 「ナオは可愛く元気にしてるよー」 「そんなに急いで帰ってこなくても大丈夫だからー」 「は?」 双子がスマホに向かってなんか言ってから、ナミがスマホにタップ。 え、今の、動画だった? 「おい、写真って言ったじゃん。勝手に動画(ムービー)撮ってんなよ。しょーぞーけんの侵害だぞ」 「せっかくだから動画に収めとこうと思って」 「義両親も喜ぶだろ。あとナオ、さては肖像権って漢字書けねぇな?」 しょーぞーけんは・・・しょう像・・・権、か? しょうがわかんな・・・って、それより義両親とか言うなよ。 まだ結婚してねーし。 「ハヤテさんが(しゅうとめ)か」 「優しいお姑さんで良かったよね。でも・・・」 「セナさんが(しゅうと)・・・」 「大丈夫、2人がかりなら負けないよ。たぶん・・・」 こら、人様の父親に勝とうとすんな。 来週帰国(かえ)ってくるんだぞ。 「・・・あ、電話だ」 ナミのスマホに着信みたいだ。 もしかして・・・。 「うん、今夜からここで3人で寝るよ・・・え?・・・はい、ちゃんと買ってきました・・・えっ?・・・はぃ・・・」 なんか言われてる。 たぶん相手はセナさん。 「ナギに代わるね」 「ん、もしもし?・・・あ、はい・・・でも俺たちも童貞卒業したばっかで・・・あ、はぃ・・・」 なんの話してんの? 童貞がどうしたって? 「え、ナオに?でも、また泣くし・・・ちょっと待って」 双子もベッドに上がって来たと思ったら、ナミが俺をひょいっと胡座の上に抱き上げて、ナギがスマホを渡してくる。 「・・・もしもし?」 『ナオ、双子には2回までって言っておいたからね。まあ、ナオにとっては4回なんだけど、頑張れる?』 「・・・ごめん、なんの話か理解したくないんだけど」 あまりに、あまりにな話で、俺はいつもみたいに感情が揺らぐどころではなかった。 その回数、あれだろ、アレの回数だろ。 なんでひとり1回にしといてくんないの? 『ナオも双子と一緒にランニングしたら?』 「ランニングのなにが楽しいのか理解出来ないからやだ」 『体力作りだよ。ハヤテだってたまに私に付き合ってくれるのに』 「え、まじ?ハヤテさん運動嫌いじゃん」 『私のために体力作りしてくれてるんだ。ナオも、双子のためにちょっとだけ、頑張ってあげて?』 えー・・・嫌だなぁー・・・とは思ったけど、とりあえず電話では「わかった」と言っておく。 ランニングで体力付いたら、サブドロップ以外で死ぬ危険性が減るのだろうか。 ・・・いや、双子が抑制(セーブ)すりゃいい話では? 「ナオ、泣かなかったね」 「頑張ったな、Goodboy(いいこ)」 「ちょっと話の内容が()せなくて」 双子が少し不服そうに「はぃ・・・」って返事してたの、エッチの回数の事だったんだな。 2回なんて充分過ぎるだろ、俺なんか双子相手なせいで4回になるんだぞ? むしろ率先して1回に(とど)めろ! 「あ、そういやナミ、さっきの電話でなんか買って来たって言ってたけど、なに買ったんだ?」 「ああ、これだよ」 ナミが、ベッドサイドテーブルの引き出しから箱を取り出して見せてきた。 なんだ、0.01って書いてあるけど、なんの・・・。 「「コンドーム」」 「・・・・・・へぇ、はじめて見た」 一気に興味が失せたわ。 さっさと仕舞え。 「ちゃんと装着する練習もしといたから」 「ヤってる最中に装着(それ)で手間取るとかねぇから安心しろ」 「いい、いい、その話はもおいい!」 まだ明るいのによくそんな話出来るな。 あ、俺が聞いたんだったか、悪かった、俺が浅はかでした。 だからさっさと仕舞え。 「でも、ナオがナマの方がイイってなったらすぐ言ってね」 「即外すからな」 「一生しとけ!」 双子の手から逃れ、ベッドを下りて部屋を出る。 寝室なんかにいるから変な話になってくるんだ。 今日もリビングで新しいゲームして遊ぼ・・・。 「またゲームする気?先に宿題したら?」 ナミがお母さんみたいな事を言う。 だが、その必要はないのだ! 「宿題出る前に倒れたから、ない」 ナミが「ああ・・・」って顔をした。 俺の勝ちだな、ゲームしよ・・・。 「別にいいだろ、勉強なんて。ナオは高校卒業したら俺たちの扶養に入るんだし」 「まあ、そうなんだけど」 「・・・は?ふように入る?」 ナギの言葉に思わず立ち止まる。 「ナオが卒業したら結婚するんだし、俺たちの扶養に入るんだぞ」 「やりたい事あるなら応援するけど、僕たちとしてはお家に居て欲しいな」 「俺をニートにすんな!」 俺だってちゃんと、大学・・・いや、専門学校・・・え、なんの専門学校行くんだ・・・大人になったら何になる・・・? 「・・・俺の将来の夢ってなんだっけ?」 「「お嫁さん」」 「いや(それ)はない」 そうだ、小学校の卒業文集に書いたはず。 ちょっと探してみるか。 俺の部屋に行き、クローゼットを開けて中を確認しようとしたら・・・。 「ナオ、これ?」 「なんで卒業文集(それ)探してるってわか・・・いや、本棚(そこ)にあるってなんで知ってんの?」 「ナオの部屋片付けてんの、俺たちだからな」 ・・・確かに。 自分のベッドに腰掛け、ナミから受け取った卒業文集を開く。 えー・・・っと、あ、あった、将来の夢・・・。 「・・・・・・嘘だろ」 小学生の俺が書いた将来の夢は、まさかの「ナギナミにやしなってもらう」だった。 「ほらね、僕たちのお嫁さんでしょ」 「ナオ、養うくらい漢字で書け」 「双子(お前ら)に洗脳されてたとしか思えない。今は養うくらい書ける」 俺の将来の夢、まさかのニートだった。 高校も、親に言われて双子と同じとこ入っちゃったし、俺ほんとなんにも考えてなかったんだ・・・。 今からでも、大人になったら何になりたいか、真剣に考えようかな・・・。

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