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第18話

須藤(すどう)(かえで)の独白─────── 俺の好きな子には、既に相手が居た。 その子とは小学校の入学式で出逢って、同じクラスで、凄く可愛くて。 休み時間にもっと話しかけたかったけど、その子の幼馴染だっていう双子がいつも邪魔をした。 それでも、双子は学年が違うから、学校内では俺の方が一緒に居る時間が長かった。 隙を見てたくさん話しかけた。 双子がその子に付き纏うから、その子は友達が出来なくて、俺が唯一の友達になった。 中学生になって、友達じゃ嫌だと思い始めた。 双子が、その子を撫でたり、抱きしめたり、髪や頬にキスしたりするのを見て、どうにかして奪ってしまいたいと思った。 でもそうしなかったのは、双子のバース・ダイナミクス検査の結果を聞いたからだ。 DomβとNormalαの双子が、囲って大事にしてるその子は、きっとSubΩだろうと思ったから。 自分も検査を受けようかと考えたけど、自分はDomな気はするがαではない気がしてた。 Domαじゃないと、その子を奪えないのに。 検査が恐かった。 高校は、その子と同じ所を受けた。 その子は、親から双子と同じ高校へ行くように言われたから受けるらしい。 何やってんだろって虚しくなったが、バース・ダイナミクスが判明するまでは、諦めないでいようと決めていた。 その子が検査を受ける前日、自分の検査結果を聞き、俺は9年の片想いを諦める事にした。 上の兄貴の彼氏の妹が、ずっと俺の事好きだって言ってくれてて、付き合ってみようかなって考えたけど、まだ頭ではわかってても心が追い付かなくて、告白に返事が出来ないでいた。 そんなある日、諦めなきゃいけないその子が、目の前でサブドロップし倒れるのを見た。 助けなきゃって焦ったけど、その子はNormalαの双子弟に抱き留められ、俺と同じDomβの双子兄のコマンドに微かに反応した。 あの状態でコマンドに反応するなんて、余程相手を信頼しているんだろう。 たぶん、俺のコマンドは通らなかったってのも、わかってる。 だから、告白の返事をした。 俺も前に進もう。 宍戸(ししど)悠真(ゆうま)の独白─────── 僕の好きな人には、既に相手が居た。 彼は高校でクラスメイトになった子の幼馴染で、1つ上の先輩で、Normalα。 僕はNormalβだけど、彼は凄くかっこよくて、一目惚れだった。 彼は双子で、お兄さんの方はDomβだって。 双子なだけあってお兄さんも同じ顔なのに、なぜか彼の方にだけ惹かれた。 休み時間の度に、彼とお兄さんは揃って僕のクラスにやって来た。 目的は、彼らの幼馴染であるクラスメイト。 そのクラスメイトがバース・ダイナミクス検査をするって話してた。 クラスメイトがSubβなら、彼のお兄さんと結ばれるだろうから、彼に告白しようって思ってた。 それなのに、クラスメイトのバース・ダイナミクスはSubΩ。 それなら、僕のお兄ちゃんを紹介しようと思った。 お兄ちゃんはDomαだし、SubΩが居たら紹介してって、冗談ぽくだったけど言ってたし。 だけど結局、先輩とお兄さんにグレアを当てられて終わった。 クラスメイトも、Domαのお兄ちゃんに興味なさそうだった。 どうして、SubΩなんだからDomαと一緒になるのが1番なんじゃないの? やっぱりまだ諦められなくて、帰り道にクラスメイトとお兄ちゃんを会わせようと、時間が合う時はお兄ちゃんに迎えに来てもらうようにしてた。 やっとチャンスが巡って来て、クラスメイトが入学以来初めてひとりで帰ってるところに出会(でくわ)した。 お兄ちゃんはクラスメイトを送るって言って、駅の方へ歩いて行った。 うまくいくといいな、と思っていた僕だったけど、もの凄いスピードで走り僕を追い越して行った彼とお兄さんを見て、ああ、彼はクラスメイトの事を本当に好きなんだって、わかった。 その場に立ち尽くしてたら、駅の方からお兄ちゃんが戻って来た。 クラスメイトは、Domαのお兄ちゃんのフェロモンに反応しなかったんだって。 クラスメイトは既に、彼とお兄さんのものだったんだ。 兄弟揃って振られちゃったね。 お兄ちゃんに悪い事したなって思ったけど、お兄ちゃんはSubΩのクラスメイトにちゃんと守ってくれる相手が居て安心したって、笑ってた。 さすがDomα、ほんとかっこいいな。 お兄ちゃんならきっと、僕なんかが手を貸さなくても、素敵な人と出逢えるよね。 僕も前に進もう。

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