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推しのためにできることは?
婚姻契約を結ぶまでの一ヶ月の間に、ノエルは身の回りのことについて学ぶ機会を設けた。シルビィも共にフローレス伯爵家へと着いてきてくれる。迷惑をかけないためにも、多少は記憶を補強しておこうと考えたからだ。
ノエルは公爵子息であり、上に兄が一人。公爵家を継ぐのは兄のため、ノエルは家のためにネイトへと嫁ぐことが決まったのだとシルビィが教えてくれた。
ネイトは伯爵子息であり、父親は居ない。母親と伯爵家当主であった祖父も亡くなっているため、現在は伯爵家の当主を務めている。
ご都合主義を貫き通しているセイントナイトでは、設定上同性同士の結婚が認められている。更に男女共に妊娠ができてしまう。
またノエルの実家であるシモンズ公爵家は、代々強い魔力を持つ者が生まれてくる。稀代の魔術師であるネイトとは相性がいいと考えられたのかもしれない。
(まぁ、それだけが理由じゃないかもしれないけど)
実はネイトは魔族と人間の間に出来た子供だ。そのため闇の魔力を操る。そのことで周りからは忌み嫌われて生きてきた。両親は共に亡くなっており、ゲーム内には登場していない。
そんな彼の心を救ったのがエアリスだ。
(ネイトの闇の魔術を見たエアリスが人を守ることのできるすごい魔法だって褒めるんだよな〜。そのシーンがめちゃくちゃ最高なんだよ!)
それからネイトは、なにかあるたびにエアリスを助けてくれるようになる。
でも結局、愛する人とは結ばれることはなかった。それどころか、興味の欠片もない人間と結婚させられてしまう。
本当に不憫でならない。
ネイトの住まう屋敷へと馬車で向かいながら、ノエルは少しだけ悲しい気持ちになった。推しが不幸になるところなど見たいはずもない。けれど、自分自身が推しを悲しませる要因だ。
どうにか推しの幸せをこの目で拝みたい。そうしなければ前世のように夜も眠れなくなってしまう。幸い推しを傍で見守る機会を得られたのだ。それなら、ネイトのためにできることをしてあげたい。
ノエルは本気で思った。
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