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5.待ち合わせ
そして、あっという間に迎えた日曜日。
俺は身なりを整え、集合場所のカフェへ向かった。
「いらっしゃいませ〜」
彼が事前に教えてくれた、窓際の一番奥の席へと足を運ぶ。
見覚えのある明るい茶髪と、ピアスをつけたお洒落な服装をした彼が、窓の外を見ながら片手にドリンクを飲んでいた。
「……あ」
声をかけるより先に、向こうが振り向き、俺に気づいた。
「どうも」
彼はぺこりと頭を下げながら、ぼそりと言った。
センター分けの前髪の隙間からのぞく太く整った眉が、男らしくて印象的だった。
俺はとりあえずにこりと笑い、挨拶した。
「久しぶりですね。元気でしたか?」
「普段通りです。あと、敬語はなしで大丈夫です」
「えっ…あ、分かった」
彼の隣に腰掛け、アールグレイをひとつ注文した。
だが……
「……」
会話が、まったくない。
やばい、普通なら俺が話題を振るべきだけど、何を話せばいいんだ?
いわゆる族の話?
それとも、さっき服の袖からちらっと見えた入れ墨のこと?
そもそも、なんで入れ墨なんて入ってるんだ……
冷や汗がじわりとにじんできた。
「あの」
「わっ!」
不意に顔を近づけられ、漫画みたいに驚いてしまう。
情けない先輩…と思われただろうか。
彼は、俺の内心の動揺をじっと見つめている。
「え、ええっと、何か?」
ニコニコと愛想笑いを浮かべ、なんとか平静を保つ。
すると、彼は窓の方へ顔をそらし、何か言いにくそうにしていた。
「その……」
一体、何を言うんだろう?
そう思っていたら…
「……好きなものって、何ですか?」
…えっと、はい?
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