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9.帰り道
「楽しかった〜っ」
あれから片桐君といくつかの乗り物に乗って、お店で食事もして、お土産まで買って――気づけば、辺りはすっかり薄暗くなっていた。
テーマパークの出口に向かいながら、自然と笑みがこぼれる。
「俺も楽しかったです」
隣を歩く片桐君も、俺の様子を見て、どこか安心したように口元を緩めている。
なんだか、前よりぐっと彼との距離が近づけたような気がする。ただのクラスメイトとか、知り合いとか、そんな枠をひとつ超えて。
「つか、あんまり跳ねてると転びますよ。楽しんでくれたみたいで、俺も嬉しいですけど」
「大丈夫大丈夫!俺、そう簡単に転んだりしないし」
「ほんとです?」
「うん。怪我したのなんて、もうずいぶん前の話だし…」
そう、答えた直後だった。
足元が急にふっと浮く感覚がした。次の瞬間、視界が反転して――
気づけば、俺は片桐君の腕の中にいた。
転びかけたところを、彼がとっさに支えてくれたのだ。
は、恥ずかしすぎる…っ!
しかも、滅多に転ばないって、さっき言ったばっかりなのに…!
「怪我は?どこか打ったりしてない?」
「し、してないしてない!ごめん、ありがとう……!」
慌てて彼の腕から離れ、顔を赤くしてそう返す。
穴があったら入りたい……。
「そういえば、家どこですか?送りますよ」
隣を歩く片桐君の横顔は、俺の醜態なんてまるで気にしていないかのように、表情ひとつ乱すことなく落ち着いている。
……片桐君って、冷静だなぁ。
それとも、俺があたふたし過ぎなのだろうか。…なんだか、色んな意味で恥ずかしい。
「あっ――ううん!大丈夫だよ。来る時も一人だったし、帰りも一人で帰れるよ」
流石に家まで送られるのは、申し訳ないしな。
「それならなおさら、送ったほうがいいでしょ」
すると、片桐君はふっと優しく笑った表情でそう言った。
尚更?
小首を傾げて歩きながら、俺は隣の片桐君の顔を見上げる。
あれ、友だちって、こういうことまでするものだっけ…?
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