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11.日常(片桐side)
「……あの~、すみません」
昼下がり。夏の日差しを浴びながら街中をひとり歩いていると、目の前に女子2人組が現れ、俺は足を止める。
「なに?」
「あ…え、えっとっ、彼女っていますかっ?もし良かったら……」
話しかけてくる彼女たちに、俺は踵を返す。
「ごめん。急いでるから」
***
とある細い路地を抜けた先にある、カフェバーに入る。
「いらっしゃいま……って、壮太郎!」
無造作にカウンター席に腰を下ろす。
店内には他に客はおらず、静かな空気が漂っていた。
「最近全然顔見せないから、心配してたんだぞ!連絡しても、ろくに返事よこさないし。佐野くんたちも心配してたぞ~」
一息つく仕草を見せる、店のマスター。俺はそれに特に表情も変えないまま、適当に相槌を打つ。
「何かあったのか?」
高校時代からの付き合いのあるマスターは、相変わらず立派な髭を蓄えたまま、手元でワイングラスを磨いている。
「いや、特に何もないっすよ」
「なんだよ。そうやって濁されると、余計気になるだろ」
「だから、ほんとに何もないですよ」
俺はそう言いながら、ポケットからスマホを取り出し、ある一枚の写真を開く。
…遊園地に行って以来、彼と会ってないな。
「壮太郎、暇なときでいいから、皆に連絡してやれよ」
「…。なんで?」
「なんでじゃないだろ。一応お前、リーダーなんだから。連絡くらい取ってやれよ」
マスターの説教を受け流しながら、俺はスマホをいじり続ける。
「――あ、そうだ。確か今日の夜、佐野くんたちがここに来るって言ってたな。お前がいるって伝えとくぞ」
ふと耳にしたマスターの話に、俺は瞬時にスマホを触る手の動きを止めた。
「いや。マスター、まっ…」
しかし、制止する俺の声は一足遅かったらしい。
数十分も経たないうちに、店のドアが開く、カランという軽い音が響く。
……来るの早ぇよ。
「ソウさん、一体何があったんですか!?」
店に入ってきた、帽子を後ろ向きにかぶった金髪の男。俺は男から無言で顔を逸らした。
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