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13.告白(片桐side)
「……つーか俺、明日から真面目に大学行くわ」
佐野と黒崎の視線、そして話題から逃れるように言う。
「大学?そりゃ…もちろん、ソウさんの好きにしてくれていいっすけど…」
「あと、リーダーも降りる」
すると一瞬、空気が変わった。微かに、ピンと張り詰めたような緊張感が広がる。
「ち、ちょっと待ってくださいソウさん……理由は何なんですかっ?」
佐野の手がわずかに震えている。ジョッキに注がれたビールの泡が細かく揺れていた。
「俺ら、ずっと仲良い仲間だと思ってたのに…」
落ち込むような声で、佐野がつぶやく。
しばらく沈黙が流れたあと、隣に座る黒崎が佐野の肩にぽん、と手を置いた。
「とりあえず、話を聞こう。それに、リーダーじゃなくなるってだけで、もう会えないわけじゃないんだから」
黒崎の冷静で慰めるような声が、場を少し和らげた。
「片桐さん、流石にもう話してくれますよね」
「……え。…ああ」
こちらへ振り向く黒崎に、俺は一瞬の間を空けて返事をする。
「最初にも言いましたけど、俺たち、あなたを責めようなんて思ってません。ただ…仲間として、友だちとして、あなたが今何を考えてるのか、ちゃんと知りたいんです」
俺は軽く息を吐きながら、頭をかく。
…黒崎相手にここまで丁寧に聞かれたら、流石に話すしかないのかもしれない。
「実は…」
腹を括るしかないようだ。
「はい」
「最近……人に助けられて」
俺は無意識に、後ろ髪をいじる。
「人に、助けられて?何の話で……あっ。もしかして、あのハンカチの人ですか?」
「まあ」
「素敵な人ですよね。男でハンカチ持ってるなんて、上品な人そうそういないし、その上、あんな修羅場に駆けつけて手を差し伸べてくれるなんて……」
黒崎がそこまで言って、ふと口を閉じる。
「…なに」
俺は彼から、視線を横に逸らしたまま尋ねる。
酒のせいか、体がやけに火照っている気がする。胸の奥が、じわりと熱を持っていた。
「……片桐さん、もしかして……。
彼のこと――好きなんですか?」
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