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19.お祭り2
街を歩いてすぐ、屋台があるのが分かった。
まだ辺りは明るかったが、周囲は既に浴衣を着た子やカップルなどで溢れ返っている。
さすが夏祭り。
「あ、星七さん」
「うん?」
「この店タピオカミルクティーとか売ってるっぽいですよ。買っていきます?」
隣を歩いていた片桐君に言われ、足を止める。
「そうだね。買っていこうか」
俺たちはそこそこ並んだ列に男2人で並ぶことに。
しかし、
「……」
……会話がない!
いや…あと何回繰り返すんだよ、このくだり。
並んでいるのは、男女のカップルや親子連れで、男ふたりで並んでいることへの気恥ずかしさもあったのかもしれないが。
「あの、星七さん」
沈黙の空気にどうしようかと思っていると、左隣にいる片桐君に話しかけられた。
「さっき言ったことについて…なんですけど」
さっき言ったこと?
「その……可愛いって、言ったこと…」
「…えっっ」
「ほんとに俺、星七さんのことバカにしてるとか、見下してるとかであんなこと言ったんじゃなくて…」
俯くようにして言う片桐君に、俺は一瞬赤くさせた顔のまま、「分かってるよ!」と言う。
「片桐君、俺のことフォローしてくれたんだよね?ごめんね!さっきは」
咄嗟にあははと笑いながら話す。
「本当は、単純に褒めたかっただけなんだよ。片桐君、スタイル良いからすごく服も映えて見えるっていうか、それで…」
「俺もですよ」
「…え?」
「俺、別にフォローして言ったわけじゃないですよ」
いたって真面目な顔つきで話す片桐君に、俺は思考を止める。
うん?フォローしたわけじゃない?
つまり、どういうことだろう。
「星七さん、どれ飲みたいですか」
考えを巡らせていると、突然隣にいる彼に問われて、俺は慌てて屋台のメニュー表に視線を移した。
「うーん…そうだな。黒糖ミルクティーかな?」
答えると、おもむろにポケットから財布を取り出す仕草をする片桐君。
「片桐君待って!俺払うよ!」
大体俺の方が歳上なのに、彼に出させるわけには…。
「じゃあ、出店交代で奢り合うのは?俺は本当は全部出したいんですけど、そうすると星七さん、遠慮してあんま食べなさそうだし」
その後、はい、とタピオカ入りのミルクティを彼に手渡され、受け取る俺。
「前に一緒に行ったカフェとか、遊園地のときも割り勘だったんだし、これくらい奢らせてください」
口端を上げてに、と笑ったカオを見せる片桐君に、俺は目をぱちくりと瞬かせた。
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