22 / 151

22.誘い(片桐side)

シャワーを浴び、タオルで髪を拭きながら浴室を出たとき、机の上のスマホから着信音が鳴っているのに気づいた。 ……佐野か。 「もしもし」 通話ボタンを押してスピーカーモードにすると、髪を拭く手を再び動かす。 「やっと出たーっ!ソウさん何してたんスか!?も〜〜!」 相変わらず騒がしい声が耳を突く。元気だけはいつもどおりのようだ。 「何って、シャワー浴びてたけど」 「し、シャワー!?」 突然部屋中に佐野のどでかい声が響き渡る。 なんなんだこいつは…。 「ま、まさかソウさん…」 「…?」 「あの、例の、ソウさんが好きだって言ってた…あの男子大学生と、ヤッ……」 「――ってねぇよ」 続きの言葉を察し、俺は思わずスマホを睨みつけるようにしてツッコんだ。 「なんだぁ~。びっくりした〜」 ホッとした声を無視して、俺はベッドに腰を下ろす。 こいつの考えてることだけは、理解不能……。いや、黒崎もか。 「で、用件は?」 話題を変えると、電話の向こうで「あ、そうだった」と佐野が言う。 「実はですね……」 どこかうきうきとした佐野の声色を感じて、何となく嫌な予感を察知する俺。 「ソウさん…いや、片桐さんに……”合コン”に参加してもらいたくて、電話したんスよっ!」 ……。 合コン…? 「今、俺職場で働いてるじゃないっすか。そこの同僚に誘われちゃって。でも、男の人数が足りなくって」 「黒崎誘えよ」 「誘いましたよ!もちろん!それでも足りないから、もうソウさんしかいないんスって!」 絶対に参加したいという佐野の熱い意思が、電話越しからでも伝わってくる。 ……はあ。 そんなこと急に言われても。それに… 「正直、興味ねーよ。バイトでほぼ予定も埋まってるし」 「――全っ然興味なくてOKです!いてくれるだけでいいんで!バイトの方は…自分でなんとかしてください!」 「おい」 「日程は来週金曜、夜6時からです!場所は後で送りますんで、それじゃ!」 言いたいことも言えぬまま、唐突に通話が切れた。 ……あいつ、一体何考えてんだ。つまり、要は人数合わせの合コンに参加しろってことか。 …馬鹿馬鹿しい。 ふと俺はスマホを手に取り、画面に映った星七さんの写真を見つめた。

ともだちにシェアしよう!