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47.デート
日曜日。2時間ほどの映画を見終えた俺たちは、その足で喫茶店に立ち寄り、雑貨店をのぞいたりして、ゆったりとした時間を楽しんだ。
施設の建物を出たときには、空はすっかり夕暮れ色に染まっていて、街は一日の終わりの気配をまとい始めていた。
「じゃあ、そろそろ解散する?」
にこ、と笑って、隣にいる片桐君に尋ねる。
Tシャツの襟元にぶら下がったサングラスが、気取らないのに洒落て見える。陽を受けた片桐君の髪は、ほんのりと金色が混じったように明るく輝いていた。
ほんと何でこの人、俺の恋人なんだろうか…。
そう思ってしまうくらい、ルックスといい佇まいといい、俺と彼では何もかもが違い過ぎている。
俺、彼といて浮いてないかな…。
「えっと…」
…?
頭を触りながら目を逸らす片桐君。その様子は、なにか言葉を探しているように見えた。
「ご飯屋とか行きません?」
「えっ?」
「無理だったら、カラオケ…とか」
「カラオケ?うん、いいよ。片桐君の歌声気になるしね」
確かに、前のカラオケの時は、片桐君の歌一曲も聴けなかったしな。彼の歌声ってどんな感じなんだろ?
そう思って、早速カラオケ店にまで足を進めようとすると、後ろから彼の手にぐっと腕を掴まれる。
「やっぱ却下で」
「え?」
??
首を傾げる俺の前で、彼が言う。
「俺の部屋……でもいいですか」
……片桐くんの部屋?
***
彼のアパートがある場所まで向かうと、片桐君が部屋のドアの鍵を開ける。先に部屋に入り、リモコンを手にピピッとクーラーのスイッチを入れる片桐君。
「お邪魔します」
傍にはキッチンテーブルがあり、右手の方には恐らく浴室があるようだ。
「星七さん、こっちに」
かけられた声に振り向くと、仕切りのようなドアを隔てた向こう側で、ベッドに座る片桐君の姿を見つける。
「…この部屋、ソファが無いので」
顔を逸らしながら片桐君に言われ、俺はそっと彼の隣、ベッドの上に腰を下ろした。胸が勝手にドキドキと鳴っている。
「急に部屋呼んですみません」
「う、ううんっ!来れてすごく嬉しいよ」
あ、なんか力み過ぎたかな…。
「静かになれるところで、星七さんと話がしたいと思って」
ードキ
「……うん」
おかしいな、俺。彼を過剰に意識してる…。彼に、そんなつもりは無いっていうのに…。
…あ。
隣を向くと、偶然なのか、ばちりと彼と目が合った。俺は慌てて目を逸らす。
…そういえば、この間俺、彼とホテルに行ったんだっけ。元々そういう目的じゃなかったし、何もしなかったけど、でも今回は、付き合ってるわけで。だから多分、あの先のことも恐らく、色々するわけで……
「星七さん」
突然彼に呼ばれた声に、体がびくりと敏感に反応してしまった。
「かたぎりく…」
振り向いた先には、近い彼の顔があった。
…もしかしたら俺は今日、彼に初めてを捧げることになるのかもしれない――。
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