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66.夢(片桐side)※

【R18】 ―― ある朝。目覚めると、スマホのメッセージにある録画が送られていた。 開いてみると、そこは廃墟のような倉庫だった。 「んん…っ、んんー!」 ライトで辺りを照らしながら倉庫内へ進むと、どこからか口を押さえられたような声が聞こえた。 辺りは窓が割れ、机などが隅に放置されている。 ずかずかと突き進む足音とともに撮影された動画は、やがて、見慣れた“彼”の姿を映し出した。 両手を頭上に引っ張られ、金属製の拘束具に固定されている。 口元にガムテープを貼られた――拘束された星七さんが顔をこちらに向ける。 膝を床につけたままの体勢で、足首にもベルトが巻かれ、身動きすら取れないようだ。 星七さんは必死に逃れようともがいていた。 「落ち着けよ。小僧」 そばに立っていたひとりの男に髪を掴まれ、顔を上げさせられる星七さん。 「アイツがくる餌にお前を使えって言われてんだ…大人しくしてたらそれでいい」 言いながら、男は星七さんの着ていた服を上に捲る。 「…っンン!?」 途端に星七さんのピンク色の乳首が露わになる。 白い肌をしているせいで、とても目立つ。 星七さんは、周りでニヤニヤとした表情を浮かべる男たちに、恐怖で瞳に涙を浮かべている。 「男になんて興味は無いが、悪くない。まだ触らないでいてやろう。楽しみは後で取っとくものだからな」 そう言って、反対側にいた男が、今度は星七さんのズボンに手をかける。 「ッッ…!」 星七さんが激しく抵抗している。 「おい!大人しくしろ!」 パシンっ!星七さんが男に頬を叩かれる。 「次暴れたら、平手打ちじゃ済まねえぜ」 星七さんの激しい抵抗は恐怖に抗えず、やむ無く収まった。 大人しくなった星七さんのズボンを、見知らぬ男の手が少しだけ下ろす。すると、星七さんの華奢な細い腰と、黒のパンツが姿を現す。 ひゅ~。男が口笛を鳴らす。 「イけるな。全然」 堪らず、星七さんの腰に手で触れる男。 「…ぅぅぅっ」 星七さんの顔はすっかり恐怖の色に染まっている。 「こうなったら、とっとと全部脱がすか」 ひとりの男の声を皮切りに、周囲の男たちが一斉に星七さんに近付き、彼の身に纏っていた服を容赦なく剥ぎ取っていく。 星七さんの四つん這いの姿が横向きで画面に映る。もっと腰を高く上げろ。後ろで星七さんの腰を持つ男がそう言い、星七さんは言う通り床に顔をつけながら、腰を高くあげた。 男の手が、体を震わせて啜り泣く星七さんのお尻を撫でる。 「……どうだ片桐。こいつは俺たちが預かった。こいつが犯されたくなければ、今すぐ1人でここまで来い。時間はきっかり1時間以内。過ぎればコイツは犯されるどころか、命の保証もできない。……いいな」 そこで映像は途切れた。 ……まずい、 今すぐ黒崎に連絡―― 「はァ、はぁっ…」 !? なんだ。星七さんが抱かれているような映像が流れている。 話が違うぞ……! いや……まて、違う。 あれは、知らない男たちなんかじゃない。あれは―― 『アイツは俺に、罪悪感があるから』 藍沢さん……―― そんな、まさか。 でも、俺はもう彼の恋人じゃない。 自分から手放したくせに、何を今更… ……そうだ。今更“後悔”したってもう、彼は。 『壮太郎……お願い。お父さんを、どうか許してあげて…』 …母さん……。 なんだ、この夢…… 早く目覚めたいのに抜け出せない。体が、金縛りにでもあっているかのようだ。 誰だ?暗闇の奥に隠れている影の正体は。お前が黒幕なのか。お前は一体誰なんだ。俺は今何に恐れてる? 記憶の片隅で、憎しみを持った瞳で俺を睨む“彼”のことを思い出す。 アンタは―― 『…俺はお前を許さない。俺に味わわせた辛さを、お前にも同じように思い知らせてやる。お前の大切にしているものを、俺がこの手で、…必ず奪い去ってやる――』 大切な…もの。 〝……大丈夫ですか?〟 倒れる俺の傍に、突然現れた俺を見つめる心配げな表情をした彼。 あのとき―― 初めて、一筋の希望が差すような光が……見えた気がした。

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