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73.気付いた気持ち

学園祭が終わった後、サークル仲間たちと打ち上げに行っていた俺は、帰りの電車に揺られていた。 …終電ギリギリ。 何とか間に合った最終の電車に、俺はほっと心の中で息をつく。 結局、学園祭で最後まで片桐君の姿を見ることはなかった。元々彼が来ると聞いていたわけではないし、それ以前に、俺たちの関係は終わっている。でも… ”ううん、元々3人で一緒に来てたんだけど、どこかに行っちゃったんだよね” 蘇る黒崎さんの言葉に、気持ちが沈む。 …会いたくなかったってことなのかな、やっぱり。 電車を降り、俺はひとり、夜道を歩く。 秋の夜風は少し、肌寒かった。 あ…そういえば、結局片桐君にLINE送ってなかったな。黒崎さんの話、本当なのかな…。 彼に、メッセージを送るとしたら……。 [黒崎さんから、今日義理のお兄さんの話を聞いて、とても心配です。片桐君、大丈夫?] …なんか違う。 [片桐君、元気にしてる?今日は実は学園祭がありました。片桐君は、今日何してた?] …さっきより違う気がする。 いや、というかそもそも、メール送ったりしていいのかな。今日だって、俺に会いたくなかったのに…。なのに、そんな俺から心配のメール来たって、そんなの嬉しくないんじゃ…。 あ……やばい、そう思ったら、なんか急に泣きそう。自業自得なのに。 振られた時からわかってたけど、俺……彼に、嫌われたんだな。 「…っ…」 俺は突如浮かぶそれに視界をにじませながら、彼のトーク画面で文字を打つ。 [会いたい] 違う。送れるわけがない。 [ごめん] 違う。 ”俺はもう、星七さんがどんな人かちゃんと分かってます。星七さんは、人を殺すような人じゃない。人に、手を差し伸べてくれる優しい人です。…俺は、ちゃんと知ってますから” 「…ぁ…っ」 頭に、いつかくれた彼の言葉を思い出す。 俺は、開いたままの彼とのトーク画面にぼたぼたと涙を落としながら、声にならない声を上げた。 こうなって、やっと分かったんだ。 彼は、絶対失っちゃいけなかった。 なのに、いつも誠実に見てくれた彼を、…俺は自分から手放したんだ。 俺、…彼が、……好きなんだ。

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