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98.不機嫌な彼2※

【後半R18】 ―― 店を出ると、俺は少し先を歩く片桐君に待って、と声をかける。 「お金、ありがとう。払ってくれて」 片桐君はちらりと俺を見やり、「いいえ」とだけ答えた。 その後、再び早足で歩き出す彼に、俺は少々困惑する。 「片桐君、まっ…」 待って、と再び言おうとして――強く、向かい側を歩く人と肩がぶつかった。 (いった……) すぐに謝ろうと振り返ると、強面のおじさんがじろっとこちらを見据えていた。 「前見て歩け!ガキが」 ――ひえ…っ。 「すみません!」 慌てて頭を下げてそう言ったとき、ふと後ろから肩に手が触れるのが分かった。顔を上げると、片桐君の視線がじっと俺に注がれていた。 そして――次の瞬間、片桐君の握られた拳が、おじさんの顔目がけて飛ぶ。 途端に地面に尻もちをつく彼のその様子に、行き交っていた周囲の人々が何事かと振り向く。 「な、何すんだ…ッ!」 「そっちが前見て歩け」 顔を抑えて声を上げる彼に向かって、隣に立つ片桐君は、淡々とした口ぶりで返している。 「か、片桐君何してるのっ?」 「何って、なんか星七さんに絡んでたんで」 そう言うと、片桐君は俺の手をとり、地べたに座り込む彼とは反対方向に歩みを進めていく。 しばらくして、人の居ない木々に囲まれた静かな遊歩道まで辿り着くと、俺は歩みを止めた。 握られていた手を離すと、前を歩いていた片桐君の足も止まった。 「どうかしました?」 不思議そうな顔をした彼に振り向いて尋ねられ、俺は一瞬なんて返せばいいのか分からない。 「片桐君、…さっきのは確かに向こうも悪かったけど、俺も悪かったよ。前ちゃんと見れてなかったし」 俺の話に、片桐君は不服そうに片眉を寄せている。 「相手も悪いなら、別にいいんじゃないですか」 「いいって、殴ることが?」 「手加減しました」 「…そういうことじゃなくて」 そもそも、事の原因は…… 「片桐君が歩くの早いから、こうなったんだよ。慌てて追いかけてたから」 「それは…すみません。でも、何であの男を殴ったことで怒られなきゃいけないのか分かりません」 「だから、俺だって悪かったからだよ。あの人、俺に手出したりもしようとしてなかったし」 「でも、星七さんに暴言吐いてた」 「…それは、仕方ないよ。一々拾ってたらキリがない。それに、片桐君さっきからずっとイラついてるでしょ?その鬱憤を、晴らしたかったからなんじゃないの?」 軽く眉を寄せてそう告げると、片桐君は同じく怪訝そうにしながら、俺からそっと視線を逸らす。 片桐君が続けざま、何やらぼそりと呟くのが分かる。 「……星七さんが隠れて、俺の兄や藍沢さんと話してるから」 「え?」 目を瞬かせる俺の前で、片桐君は目を逸らしたまま不機嫌そうな顔をしている。 「つーか…俺以外の男と、連絡とるのやめてください」 眉を軽くしかめて突然そんなことを言う彼に、驚いて目を丸くさせる。 冗談を言っている雰囲気ではないようだ。 「変なとこに呼び出されるかもしれないし、…誰に何をされるか分からない」 「…まさか、考え過ぎだよ。それに俺、男だよ」 「そんなこと分かってる」 (わかって…るのか。) ……片桐君、もしかして、俺がお兄さんに前捕まったから、それが彼の中で強い不安を抱かせているんだろうか。 「あの、片桐君。俺お兄さんには確かに…色々されたけど、その、後ろは守ったよ」 「…なんで突然そんな話?」 「だって片桐君、なんか不安そうだし…正直に言った方がいいのかなって。それに、俺も片桐君に変な誤解されてるなら…嫌だし」 ――と、片桐君に片腕を掴まれる。 少しして歩いた先にあったホテルに、迷いなく俺の手を引いて入っていく片桐君。 部屋を開けた先にある大きなベッドを目の当たりにして、俺は仄かに顔を赤くする。 遮光カーテンが閉じられているのか、昼間とは思えないほどの静けさと薄暗さに包まれていた。 「か…片桐君」 緊張した声で言いながら振り向くと、上着を脱ぐ彼の姿を目にする。 上半身裸になった片桐君に手を引かれ、俺は服を着たままベッドの上に座る。 そのまま肩を軽く押され、仰向けに倒れる俺に向かって、片桐君が上から覆い被さるようにして舌を入れたキスをする。 すぐに上の服を捲られ、パンツの下に彼の手が潜り込む。 彼の唇が首筋へと移り、彼の手に胸の突起を摘まれる。 「…片桐君」 顔を横に逸らし、生理的な涙が浮かぶ目を瞑っていると、「やっぱ服脱いで」と彼に言われる。 立ち上がり、着ていた上着とシャツを脱ぐと、再びベッドへ押し倒された。 片桐君の唇と舌が時折鋭い痛みを与えながら、首から下へと降りていく。 同時に、履いていたズボンとパンツを彼の手に脱がされていく。 「星七さんって何でいつも甘い匂いするんですか」 体の上で、片桐君が肌に顔を寄せるようにして囁く。 「え…」 体を這う唇と、彼の手にアソコを握って弄られる甘い刺激から、俺はすぐに受け答えができない。 「フルーツよく食べてるとか?」 「、ううん」 彼に胸の突起を執拗に舐められてビクビクとアソコが震える。 「……じゃあもしかして、”魔性”とか?」 やがて、彼に少し強く擦られただけで呆気なく果てると、片桐君が手に付いたそれを軽く舐めながら、上から俺を見下ろす。 彼が俺の足を開き、濡れた指を後ろへと入れる。 「あっ」 「力抜いて。もう指の感覚は分かりましたよね」 「う…うん」 「じゃあ、今日は挿れてみましょうか」 え…? 「――俺のを」

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