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132.支配される夜※

【ページ下部R18】刺激強めの表現を含みます。 ―― …星七さん… (あれ、なんか…片桐君の声が聞こえる。 また、彼の夢でも見ているんだろうか……。) …… 「星七さん」 ――…いや、違う! かけられる片桐君の声に慌てて目を覚まし、柔らかなソファの上で体を起こす。 そばには、上着を羽織った片桐君が立っていた。帰ってきたばかりなのか、灯りのついた部屋で俺を見下ろしている。 確か…片桐君の部屋を探索し終わったあと、このソファに横になっていつの間にか意識を失ったような…。 彼の背後に見える、壁に掛けてある時計の針は、深夜0時を過ぎている。 ……片桐君、今の今まで仕事してたんだろうか。 「ベッド、使って寝て良いんですよ」 片手でネクタイを緩めながら話す片桐君。 俺はソファに腰掛けたまま、首を横に振る。 「お風呂入ってないし、汚いし…」 と、そこまで言ってふと、明日も仕事があることを頭に思い出す。 まずい!今すぐ帰らないと……! 立ち上がり、部屋を早急に立ち去ろうとして、片桐君の手に腕を掴まれる。 「急にどうしたんですか」 「―帰るよ俺っ!明日も仕事だし!」 まだ入社して数ヶ月。こんな早々に休む訳には絶対にいかない…! 「ここから行けばいいじゃないですか。送ってあげますよ」 穏やかな片桐君の瞳に見つめられ、どきりとする。 あ…そっか。送ってもらえるなら……確かに… ――いや無理があるよ…! 「服も替えがあっちにあるし、下着とかも色々…」 「下着なら新しいのありますよ。白シャツもいくらでもあるし」 「…え」 片桐君の話しに、俺は徐々に焦っていた気持ちを鎮める。片桐君は変わらない冷静な目で俺を見ている。 「それに、まだ俺の聞きたい話もできてませんし」 聞きたい話…? っていうか…つまり、俺は今日ここに泊まる流れになるってこと……? 片桐君と、ひとつ屋根の下で……? ――『俺が好きだって言えよ』 あの夜のことを思い出して、俺は足を後退りさせる。 …絶対、やばい予感しかしない…。やばくなる予感しか……。 「俺、ちょっとトイレに…」 ぎこちなく笑ってその場をあとにすると、俺は静かに玄関ドアの前まで足を運ぶ。 あ……しまった。 すっかり忘れてたけど、このドア開かないんだっけ。 そもそも外に出られたとしても、深夜0時を超えてるし… タクシー…… でも、いくらかかるんだろう。ここまでけっこう距離あったよね……。 ドアの前で思考を巡らせていると、背後から気配を感じて目を大きくさせる。 「帰しませんよ」 後ろを振り向くと、壁に背を預けて腕を組む片桐君が、ドア前で佇む俺を見据えている。 センター分けされた黒い前髪の隙間から、彼の鋭い目が覗く。 ――ドキン 長い間彼の目を見つめていると、彼に対して抱いていた気持ちが溢れ出す気がした。 慌てて彼から目を逸らす。 「あ……じゃあ、先にお風呂入らせてもらおうかな、さっき見たけど、すごい浴室広くて」 笑って言いながら片桐君の前を通り過ぎようとして、 「――彼と別れたんだろうな」 すぐそばで片桐君のそんな声が聞こえて、思わず体を揺らしてその場に立ち止まった。 「え…」 目を泳がせていると、片桐君に腕を掴まれて、壁に背中を押し付けられた。 俺は目の前の彼の顔を見れず、視線を彷徨わせる。 「何でそんなに動揺してるんですか」 「……別に、動揺なんて」 「数週間前に、彼と出かけたあとホテルに泊まってますよね」 ビク …何で、全部知ってるんだ…。 「まさかそこでシたんじゃないだろうな」 「――シてない……っ!してないって」 俺は思わず声を上げる。 藍沢のためにと思って言っているのか、それとも、彼に誤解されたくなくて言っているのか、よく分からない。 「信用できない。俺の兄とも平気で会うし、藍沢さんとも相変わらず仲良くしてるみたいだし」 片桐君はすこぶる機嫌の悪い様子で眉を寄せ、視線を横に逸らしながら言う。 そんなこと言われたって…。 「シてないなら、何してたんだよ。ホテルで」 「…え」 「何もしてないわけないだろ。彼はあなたが好きなんだから」 唐突に投げかけられた彼の言葉に、俺は自分がしていたことを思い出し、顔を赤らめた。しかしその熱はすぐに引き、血の気が失せて青ざめていく。 「…な……なにも、何もしてないよ…」 「……」 「ただ普通に、……泊まってただけ。…歩き疲れてたし、部屋に入ってすぐ、シャワー浴びて寝…」 片桐君に腕を強く引っ張られ、ベッドのある部屋へと連れて行かれる。 どさっとベッドに放り投げられ、すぐ顔を上げる。 「嘘ついてんじゃねーよ!」 彼の低く大きな声に、ビクッと体を萎縮させる。 本能的に逃げ出そうとする体を掴まれ、スーツのジャケットを引き剥がされる。すぐに片桐君の手が俺のズボンにかけられ、俺はそれに強く抵抗する。 「いやだっ、嫌だってば!」 「すぐ他の男に靡きやがって、俺も大概舐められたもんだ」 言って、片桐君は俺のズボンとパンツを剥ぎ、丸裸にした俺のお尻のナカに、硬くて大きいモノを無理やり入れてきた。 乾いた場所にめりめりと入ってくる感覚に、感じたことの無い恐怖を感じた。 「いやだ!痛い…ッッ」 いたい!痛いっっ!! 「痛い、痛いよっ、片桐君っっ!」 うつ伏せの状態で強くシーツを掴みながら体を震わせる。 片桐君は逃げる俺の腰を無理やり掴み、ナカへ入れていく。 「ううぅぁぁ…っっ」 そのまま奥まで入ってくるのを感じながら、俺は涙を流した。

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