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第2話:誰にも見えない場所で
学校のチャイムが鳴るたびに、心臓がぎゅっと縮む気がする。
廊下の音。足音。笑い声。
全部が、僕を笑ってるように感じた。
教室のドアを開けた瞬間、一瞬空気が止まる。
──また、来ちゃった。
そんなふうに見られてる気がして、足がすくんだ。
机の上には、誰かが置いた消しゴムのカス。
イスの背もたれには、乾いたジュースのシミ。
教科書には、マジックで描かれた落書き。
「死ね」「気持ち悪い」「クズ」
どれも、僕が何もしていないあいだに勝手に増えていた。
先生は見て見ぬふりをしてた。
「気のせいだろ」「気にしすぎだ」
笑ってそう言った。
……何を信じればいいのかわからなくなった。
昼休みは、トイレの個室が避難所だった。
誰にも見つからないように、音を立てずに泣いた。
泣いても、どうせ意味はないとわかっていても、
涙が勝手に出てくる。
──何のために、学校に来てるんだろう。
──なんで、生きてるんだろう。
そんな問いが頭をぐるぐる回る中、スマホだけが救いだった。
SNSで見かけた投稿に、無意識に反応していた。
「家に居場所がない人、話しませんか」
「今日もひとりで泣いてます」
「誰か、話を聞いてくれる人がほしいです」
見知らぬ誰かの声が、
どうしようもなく、僕を引き寄せた。
その夜、知らない大人とやりとりを始めた。
「君、寂しそうだね」
「会って話すだけでもいいよ」
その言葉に、救われた気がした。
名前も顔もわからないその人に、
僕はぽつぽつと、今まで言えなかったことを話し始めていた。
──そして、このあと何が起きるのかも知らずに。
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