3 / 4

第3話:声の奥にあったもの

「こんばんは」 それだけの短いメッセージを送るのに、指が震えていた。 相手からの返事はすぐに届いた。 「今日も連絡くれてうれしいよ」 「無理してない?ちゃんとごはん食べた?」 まるで、本当に僕のことを気にかけてくれてるみたいで、 スマホの画面を見ながら、心がじんわりあたたかくなる。 • 「うん……学校はちょっとつらいけど、大丈夫」 「えらいね、話してくれてありがとう」 たったそれだけのやりとりが、 僕の一日を“誰かに見てもらえた”って気持ちに変えてくれた。 優しい言葉をもらうたび、 僕はもっと話したくなっていった。 もっと、もっと── この人と話していたい、って思った。 • 「君はほんと、がんばりすぎなくていいんだよ」 「会って話すだけでも、少し楽になれるかもね」 そう言われたとき、 僕の心は少しだけざわついた。 でも、怖いというよりも、 「会ってもいいのかもしれない」って思ってしまった。 だって、 誰も僕に優しくしてくれなかった。 誰も、僕の話なんて聞いてくれなかった。 この人だけが、 僕の“声”をちゃんと聞いてくれた気がした。 • 「……会ってくれる?」 画面の文字を送信したあと、僕の鼓動はずっと早かった。 その返事が、「うん、もちろんだよ」って返ってきたとき── どこかで、何かが決まってしまった気がした。

ともだちにシェアしよう!