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第3話:声の奥にあったもの
「こんばんは」
それだけの短いメッセージを送るのに、指が震えていた。
相手からの返事はすぐに届いた。
「今日も連絡くれてうれしいよ」
「無理してない?ちゃんとごはん食べた?」
まるで、本当に僕のことを気にかけてくれてるみたいで、
スマホの画面を見ながら、心がじんわりあたたかくなる。
•
「うん……学校はちょっとつらいけど、大丈夫」
「えらいね、話してくれてありがとう」
たったそれだけのやりとりが、
僕の一日を“誰かに見てもらえた”って気持ちに変えてくれた。
優しい言葉をもらうたび、
僕はもっと話したくなっていった。
もっと、もっと──
この人と話していたい、って思った。
•
「君はほんと、がんばりすぎなくていいんだよ」
「会って話すだけでも、少し楽になれるかもね」
そう言われたとき、
僕の心は少しだけざわついた。
でも、怖いというよりも、
「会ってもいいのかもしれない」って思ってしまった。
だって、
誰も僕に優しくしてくれなかった。
誰も、僕の話なんて聞いてくれなかった。
この人だけが、
僕の“声”をちゃんと聞いてくれた気がした。
•
「……会ってくれる?」
画面の文字を送信したあと、僕の鼓動はずっと早かった。
その返事が、「うん、もちろんだよ」って返ってきたとき──
どこかで、何かが決まってしまった気がした。
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