34 / 80
第34話
獅子……デューフィーの寮旗に描かれている姿しか見たことがない。いつか本物の獅子を見ることができたらどんなに幸運なことだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、レフさんがぽすぽすとぼくの肩に優しく手を乗せてきた。
「オズは獅子のことが聞きたかったのかい?」
「あっ、いえ。国王様がどんな方なのか気になって……ぼくの生まれは王都から遠く離れた辺境の街だったので、国王のことを何も知らないんです」
「なるほど。ではズニ国王について僭越ながらぼくが説明するとしよう」
シャルメーニュの間の端にある談話室の一角で、レフさんは足を組んでぼくの顔を見つめた。
「ズニ国王はここ何代かの王の中で1番の賢者と名高い。3年前に前国王が老衰のためお亡くなりになってからズニ国王が即位された。賢者と名高い理由はいくつかあるが、内政の手腕と外交の手腕に自信と実績があるのが大きいと思う」
レフさんは2本の指を立てると今度はぼくに質問してきた。
「昨年の税率引き下げの命を知っているかい?」
「はい。昨年は凶作につぐ大凶作であったと噂で聞きました。あれは非常にいい判断でしたね。税率が高いままであれば、きっと夜逃げする農民たちで溢れていました」
ぼくは自分の幼い頃の記憶と照らし合わせて言った。レフさんは「さすがだね」と笑ってぼくの意見を認めてくれた。レフさんに褒められると、どんなに素晴らしい先生たちに褒められるより1人の人間として認められた気がして誇り高い気持ちになるのだ。入寮して半年が経った中でレフさんはぼくにとって信頼できる兄のような存在だと感じていた。
ともだちにシェアしよう!

