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第35話

「王はああやってその年の状況によって政策を柔軟に変えられる人だ。それゆえ、臣下や国民からはとまで呼ばれている」 「光王……」  しかし、とレフさんの目が細くなる。この顔をするときのレフさんは、重大なことを言う前の顔だった。 「外交、つまりは侵略ということになるのだが光王はそちらの方面にも明るくてね。即位してからまもなく始めた南西部の大攻略に力を尽くしておられる。今回の訪問も若き兵士たちの士気を上げるためだとも言われている」 「侵略戦争ですか……」  言葉では理解できていても実感としてはまだ何もわいてこない。いつかぼくも戦地に赴くことがあるのだろうか。 「まぁそれもぼくたちが徴兵されるのは明日明後日の話ではない。早くても数年後の話さ。ぼくだってあと2年したら20になるけど、騎士として食っていけるかどうかはまだわからない」 「でも、レフさんは頭も良くて剣劇も見事だと聞きました。レフさんが騎士になれないのであれば、ぼくなんかはもっと難しい……」  尻すぼみになったところをレフさんにこづかれる。こういうやりとりもいつのまにか当たり前になっていた。 「こら。また自分を卑下しているぞ。約束しただろう。ぼくの前ではそんな言い方をしないと」 「すみません……もう癖のようなものなので。気をつけます」

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