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第38話
「これから剣名式を始める。まずは寮生代表デューフィーの寮長。前へ」
ぼくは再び壇上を凝視した。
今なんて言った? デューフィーの寮長? ハイリーー。
かつん、と長靴が床を踏む音が広間に響いた。壇上に登りズニ国王の前で跪く後ろ姿には見覚えがあった。なびく黒髪の隙間に白髪の毛束が流れるように伸びている。
そして彼はゆっくりと口を開いたのである。
「国王陛下のご来訪ありがたく思います。この度は今年度の新寮生の剣名式でございます。我らがピシャランテ騎士団寮の血を受け継ぐに値するかどうか、しかと目に留めていただきたくご挨拶とさせていただきます」
しばらくの沈黙のうち「よかろう」と王がつぶやいた。ハイリは静かに壇上から降りていった。無駄のない綺麗な所作だった。
そして始まった剣名式では、上級生に見守られながらの参列だった。見守られているというより、値踏みされているといったほうがいいかもしれない。特にデューフィーの寮生のほうではピリピリとした空気に包まれていた。ぼくは自分の番を待っている間、デューフィーの寮生のほうを見ていた。視界の隅にはハイリの姿があり、周りの上級生と同様冷ややかな目で新寮生たちを見つめていた。
あんな目をする人じゃなかったのに……。なぜ? あんなにも変わられてしまったのか……。
ぼくは自分の番がくる間ずっと同じことを考えていた。そして、いよいよぼくの番がきた。
「オズワルド。前へ」
「はい」
両方の手足が一緒に出てしまいそうなほど緊張していた。ぼくは剣の名前を教えてもらうために名を与える人ーーシャルメーニュではエリオ寮長の役割だったーーの前に片膝をついた。
「剣名はおまえの命と等しいものとして扱え。ここに今、おまえの剣の名前を与える」
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