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第39話
「おまえの剣名はタッセルだ」
「ありがとうございます」
寮長の持つ剣で肩を叩かれる。それを合図にぼくは立ち上がり、自分の列へと戻っていった。
タッセル。これからよろしくね。
腰にぶら下げたまだ扱い慣れていない剣を撫でながらぼくは心の中で呟いた。
全ての寮生の剣名を言い与えると、式が終了する前に国王陛下のお言葉をいただくことになった。皆一様に膝をつき顔を壇上へ向ける。広間はしん、と静まりかえっていた。
「よい剣名式であった。若人よ。己と戦い立派な騎士となれ。そしてこの国を変える駒となって我が国に命を捧げよ」
国王の言葉は地に染み込むようにぼくの体の奥底まで響いた。そして割れんばかりの歓声がどこからともなく上がったのである。
「うぉぉぉ!」
剣を高々と突き上げ、活気に満ちたその瞬間。場が一帯となったその一瞬に事は起こった。
「陛下っ」
国王の側で控えていた男が槍を振り上げ王の首を狙ったのだ。
「危ないっ」
ぼくはとっさに体を傾けたが、こんなに離れたところからでは何もできない。
「っ」
王を狙った男の槍は別の剣によって弾き返された。そして相手が王から邪魔をした男に的を変えた瞬間に、助けに入った男は王を背に隠した。
艶やかな黒髪は剣劇の中でも綺麗になびいた。その隙間から流れる白髪も、弧を描いて宙に舞った。
鈍い音を出して剣が男の胸を貫いた。容赦なく押し込まれる刃の先から赤黒い血が噴き出した。
「ハイリっ!」
ぼくは叫び声を上げた。しかしそれも、喧騒の中に飲まれていく。
「国王をお守りしろっ」
「こやつ。一体どこから紛れ込んできたのか!?」
「国王様、ご無事ですか?」
国王は焦りの様子など見せず目の前に立つハイリを一瞥しただけだった。
「心配せずともよい。静まれおまえたち」
光王の命令でぼくたちはピタリと声を止めた。
壇上の上で倒れる男をハイリは絶対零度の瞳で見下ろしていた。
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