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第41話

「慣れる必要はない。ぼくだって血生臭いのは苦手だ。極力避けたいと思う。けれど、避けられないときもある」  今日のハイリは恐ろしかった。ぼくの知っているハイリとは大きくかけ離れていて、それがひどく寂しかった。 「お祝いに来たというのに暗い思いをさせてしまったね」 「大丈夫です。ちゃんとした剣の名前をもらって嬉しかったし、こうしてレフさんにお祝いしてもらえるのもすごく嬉しいから」  ぼくの言葉を聞いて「ふふ」と微笑みを浮かべるレフさんを横目に、ぼくは聞いておきたかったことを思い出した。 「そういえば、タッセルって言葉の意味を知っていますか?」 「タッセル……ああ、大木を意味する名詞だよ」 「大木……」 「ほんとうにいい剣名をつけてもらったんだね」 「レフさんの剣名はどんなものなんですか?」  するとレフさんはにかっと笑って言った。 「命と等しいものだ。簡単には教えられないよ。そうだなーー」  少し考え込むようにしてレフさんがこぼした言葉はぼくに衝撃を与えた。まるで隕石が落ちてきたかのように。 「おやすみのキスをしてくれたら教えてあげるよ」 「へっ?」  おやすみのキス? ハイリとぼくが小さい頃は眠る前にやっていたけど、大きくなってからはずっとしていなかった。それをしてってこと? でも大きくなったらあまりしないって小さい頃にハイリから教わった。 「冗談さ。その困った顔が見たかっただけ」  レフさんは目を細めてぼくを温かい眼差しで見つめてくれる。 「えっと、あ、ごめんなさい。冗談とかそういうの慣れてなくて」

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