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第42話

「謝らなくていいよ。明日も早いだろう。そろそろ部屋に戻る時間だ」  ろうそくの火を次々と吹き消していくレフさんの後ろ姿を見て、ぼくは平静を取り戻そうと努力した。  部屋の前まで送ってもらうと、レフさんは去り際手を振って自分の部屋に戻っていった。中で眠っているであろうウルクを起こさないようにと静かにドアを開けると、不思議な物音が部屋の中から聞こえてきた。  ぼくは泥棒でも入ったのかと警戒し、持っていた本の背表紙を撫でて物音のする方に近づいていった。この硬さの本なら頭に一撃を与えられるはずだ。 「ふっ……くっ……」 「……ん」  それはベッドの1段目で行われているようだった。ぼくにはウルクが襲われているように思われて、思わず…… 「曲者! ウルクから離れろっ」  電気をつけるのと同時に蠢く影に本の背表紙を叩きつけようとした。 「ちっ」 「えっ!?」  そこには上半身裸の2人の男がいた。下に見知らぬ男の子が寝転がっていて、上にウルクが乗り上がっている。ぼくは舌打ちしたウルクを見て嫌な予感がした。だらだらと嫌な汗が滲んでくる。 「この馬鹿が」 「時間切れだねー」  下に寝転んでいた男の子が素早く衣服を整えた。ウルクはいいところを邪魔されたと言わんばかりにぼくを睨んでくる。 「また今度ね。ウルクー。おやすみー」  男の子はバタバタと忙しなく部屋から出ていってしまった。残されたぼくとウルクの間には最悪の空気が流れていて……。

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