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第49話

「それはそうとオズ。今日が何の日だか知っているかい?」 「ええと……テバ教の祭日ですよね?たしか、テバの祖先がこの国を建国したという」 「それもそうだが、今日は国を挙げての祭事があったろう?」 「……なんだったか忘れてしまいました」 「獅子狩りだよ。前にも話したろう。ズニ国王が飼われているのと同じ種類の獅子を新たに狩りに行く日だ」 「そういえばそんな話を聞いたような……」 「そのために朝からデューフィーの寮生たちは大忙しだ。あの剣名式での一件以来、寮長であるハイリは王にいたく気に入られている。今までは王の近衛兵だけで行っていた獅子狩りにまで同行する始末だ。デューフィーの寮生の鼻も高いだろう」 「獅子狩りには国王も参加されるのですか?」 「いや、今回は国王の息子であるシス王子が率いると聞いているよ。なんでもシス王子のための獅子狩りだそうだからね」 「王子のための?」  ぼくはレフさんの言葉に違和感を覚えて頭を傾げた。 「我が国の王子はもう25歳だ。そろそろ結婚していてもおかしくない年だが、まだしていない。となると考えられるのはただ一つ」  レフさんは半笑いで口にした。 「よっぽどの賢者か、ただの親の脛かじりかだ」  ぼくは国王のことも最近知ったばかりだからか、王子のことはさらに遠い存在に感じていた。生まれながらにこの国を背負うことになった若者はどんな思いで今まで生きてきたんだろうか。そんな気持ちで胸がいっぱいだった。

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