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第55話

 場が温まってきたのか、ぼくもハイリ以外とは話せるようになった。イルファさんは17歳だが、まだまだ子供っぽいところがある。彼が笑うとその場が途端に明るくなるのだ。  面白い雑学も知っているし、なによりゴシップネタに詳しい。ぼくの知らない寮生の秘密をどんどん教えてくれた。 「ウルクのおしりにはほくろがついててねー。それがまた豆粒みたいに大きいんだ」  イルファさんは指で豆粒を表現してげらげら笑っている。ぼくはウルクの裸を想像するのは気が引けて、静かに笑うだけにとどめた。 「そういえばこの前ウルクに聞かれたんだけど、オズにはそっちの気はないの?」 「そっちの気?」 「男同士のことだよ。オズはわりかし綺麗な容姿をしているから、相手には困らないだろー?」 「えっ!?」  ぼくはぎょっとなって持っていたビスケットを落としてしまった。そして今までずっとぼくに視線をよこさなかったハイリが、今日初めてぼくを見たのである。  なんて冷たい目……。 「どうなの、オズ?」  なにやらレフさんも真剣な目で見つめてきて、皆の視線がぼくに集まり苦しくなる。ぼくは恐る恐る口を開いた。 「男同士の恋愛を否定するつもりは全くありません。ただ、恋をするとか、愛するとか。そういう気持ちがまだぼくにはわからないんです。だから、なんとも言えません」

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