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第65話

 レフさんにはデューフィーの寮長であるハイリに憧れている、とだけ伝えている。ぼく以外のシャルメーニュの寮生もハイリを憧れにする者は多く、よくある話だった。 「ぼく剣撃は苦手だから……相変わらず練武もついていくので必死なので」 「剣舞なら自分の実力が出せると?」 「はい。昔から体を動かすのは得意な方なので……剣撃が苦手なのは実戦に近いからだと思うんです。剣舞なら相手に当たる前に寸止めで止められるから……ぼくも練習すればできるかなって」 「いいと思うよ」  びくびくしながら聞くと、レフさんはけろっと答えた。レフさんは厳しいことを言うと思ったから拍子抜けした。  レフさんは後ろに縛った髪を解くと、髪を耳にかけて言った。 「ぼくでよければいい先輩を教えてあげられるし、君のやりたいことなら全力で応援する」 「ありがとうございます。ぜひ、教えてください。あと1ヶ月しかないので、1日でも早く練習したいんです」  レフさんは立ち上がりぼくを見下ろした。ぼくと頭ひとつ分違う身長のせいか、ぼくらの距離が遠くに感じられた。 「とっておきの先輩を紹介するよ。でも今日はお腹いっぱいだろうから休んだ方がいい。練習は明日からでもいいだろう」  「吐くほど厳しいだろうから」とさらりと怖いことを言った後でレフさんがくすっと笑みを見せた。

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