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第66話 剣舞大会
「あぁ、だめだ……」
あれよあれよというまに1ヶ月が過ぎ、今日は剣舞大会当日。レフさんが紹介してくれた先輩はまさに鬼のように厳しくて、何度泣かされたことだろう。
ぼくは自室で剣舞大会用にこしらえた衣装に身を包んでいた。スウェロニア家の奥様に剣舞大会に出ることを伝えると、喜んで衣装を作ってくれた。絹と白銀の尾を持つ白馬の立髪を使った刺繍は、紺の布地によく映えた。鏡台には自信がなさそうに俯くぼくの姿があった。衣装はばちりと決まっているのに表情は冴えない。初めて大勢の前で剣舞を見せるとあって緊張してたまらないのだ。
剣舞大会はデューフィー、シャルメーニュ、カロスの寮生から2人ずつ選出された選手が出る大会だ。
ぼくは鬼の先輩の力添えのおかげで、なんとか決勝戦への切符を手にした。毎日泥を被ったように汗と草にまみれた日々は、今思えば懐かしいくらいだった。
もともと剣の振り方には問題がなく、型だけは綺麗だと練武の際に先生から褒められていた。しかし、実戦となると相手を傷つけることを異常に怖がって動けなくなってしまい、ぼくの方がやられてしまうというのがいつもの流れだった。
そういえば剣撃で勝てたのは、トータルが100試合だとしたら5回くらいだけだっけ……。
ぼくが剣撃のときに動けなくなるのを周りの寮生にからかわれて「地蔵のオズワルド」と呼ばれていたけれど、その汚名も今日で返上だ。
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