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第68話

「やっほー。かっくかくじゃんかーオズ」 「イ、イルファ先輩!」  剣舞大会はデューフィーの持つ大円庭で執り行われることになっていた。ぼくはその端に設営されたテントの中で自分の順番を待っているところだった。  控室にイルファ先輩が入ってきたのを見て、かくっと膝の力が抜けて座り込んでしまった。 「おまえなー。俺が怖いからってそんなにびくびくしなくてもいいーだろー?」  けらけらと笑いながらイルファ先輩が放心しているぼくの頬をつつく。そして、イルファ先輩の後ろから「やぁ」と片手をあげてレフさんが姿を現した。 「鬼の先輩はまだ怖いかい?」 「そ、そんなことありません。ただ2人の姿を見て驚いただけで……」  控室にはぼくを含めて6人の選手が準備をしていた。応援に駆けつけている寮生もいれば、ただ1人黙って剣を磨く選手もいる。皆がおもいおもいに自分の番を待っていた。 「俺のティーチングに耐えたお前ならきっと大丈夫だよー。前の剣舞大会優勝者の俺が言うんだから間違いない」  あげるよーと言ってイルファ先輩が差し出してきたのはチョコレートの包みだった。 「甘いものでも食べて気を紛らわすといいよー」  糖分は大事だからねとぼくの手に押し付けてくる。ぼくはイルファ先輩の言う通りにチョコレートを口に含んだ。雪解けのように溶けたチョコレートの香りが鼻を通っていく。体の神経が少し落ち着いたのか、冷や汗がピタリと止まった。

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