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第74話

 涙でぼやけた視界にはハイリの姿があった。直立したままのハイリがすとん、と腰を折り曲げてぼくの傍に手を差し伸ばした。 「ん……」  熱い手が頬を撫でる。その触り方がぎこちなくて、優しくてぼくの目からは涙が溢れた。幼い頃、ぼくを慰めてくれたときと同じ大きな手のひらがぼくを包む。 「オズ……」  気を失う直前、ぼくの名前を呼ぶ優しい声が耳に響いた。

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