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第97話 実戦形式の訓練スタート

「皆、集まったな」  朝8時。小鳥の囀りが聞こえる。デューフィーの大円庭に護衛隊とシス王子が馳せ参じていた。ウィル様は時計台を見つめると、ぼくらの顔を見渡して告げた。 「まず、伝えておかなければならない。シス王子を護る盾となり、剣となるのはお前たち4人だ。ハイリ、レフ、イルファ、オズワルド」  ぼくは背筋をぴんと伸ばしてウィル様の言葉を待った。シス王子は数メートル先にある花崗岩の階段で腰を下ろしてぼくらの様子を眺めている。あまり関心がない様子だった。 「互いの名前の呼び方を再度確認しろ」 「はい」  ぼくらは小さな円陣を組みそれぞれの呼び方を確認した。 「ぼくは、ハイリ、レフさん、イルファ先輩と呼ぼうかなと思っているんですが……」 「うん。オズは呼び慣れた言い方がいいだろうね」  レフさんがにこやかに笑いかけてくれる。ぼくはほっとして他の2人の顔も見つめた。 「オズ。俺を『にいさま』と呼ぶのは控えろ。いつ誰が耳を立てているかわからない。王子の護衛に集中するためだ」 「わかりました。気をつけます」  ハイリの言葉に深く頷く。やっぱり、見ず知らずの場所でハイリを『にいさま』と呼ぶのは危険だよね。 「俺はそうだなー。ハイリ、レフ、オズかな。今まで通りのほうが呼びやすいし」 「ぼくもイルファとハイリの意見に同意だ」 「わかった。これでいく。それと──シス王子もこちらへ来ていただけませんか?」 「ハイリの頼みなら仕方ないな」  はあ、と大きくため息をついたシス王子。服装が変わっていた。昨日着ていたような煌びやかな服ではなく、地味なチャコグレーの庶民のような服だ。それが肌にあたって痒いのか、首と手首をかいている。 「ウィル。この服かゆいよ。チクチクする」 「シス王子。どうかご辛抱ください。これから向かうのは王都でもなければ、舞踏会でもありません。王族という身分を隠すためのひとつの知恵です」 「……仕方ないな」  口を尖らせて文句たらたらなシス王子。本人には暗殺者に狙われる恐れというものがまったく無いようだ。護衛隊のぼくらを信頼してくれていると捉えれば聞こえはいいが、共に旅をする仲間として連帯感がなければ死地は越えられないだろう。 「俺のことは皆なんて呼ぶんだ? 王子なんて呼んだら、それこそ怪しまれるだろう」 「それについては、シス王子のことをシス、と呼ばせていただきます。よろしいですか?」 「へえ。お前ら生意気だな。まあ、許してやる」  ふんぞり返るシス王子を見ていると、なんだか小さな子どもを見ているみたいでハラハラする。悪戯して誰かに怒られないかな、とか。冗談なのか本音なのかわからないな、とか。

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