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二十 僕はあなたの人形③

   壮史さまの手が滑り落ち、袴の上から僕の膨らみにそっと触れる。  そして指先が、はっきりと、そこを――張りつめてふくらんだ、自分でも怖いほど熱を持った部分を、そっとなぞった。 「――ぁ、ぁっ……!」  身体が、はねた。 息が止まりそうになる。  咲君。  壮史さまの声が、頭の奥で響く。  「怖がらないで。咲君は、こんなに感じてる。身体は拒んでなんかいないよ」  壮史さまの指が、袴の上からゆっくりと滑り、腰のあたりで一瞬止まる――そして、するりと袴の脇あきから入り込んだ。襦袢の柔らかい布ごしに、彼の手が着実に奥へと進んでくる。  襦袢の内側――その、さらに奥。肌の熱が、壮史さまの指先に伝わっていくのがわかる。まるで何重にも織り込まれた衣のうちから、じわじわと秘所を暴かれていくようだった。 「それ以上は……お控え、ください……」  ふわりと冷たい指先が、素肌に触れる。太腿のつけ根、やわらかい部分を、くすぐるように撫でられた。  僕は壮史さまの腕を掴む。 「……やだ、って……言ったんです」  僕は初めて、壮史さまを睨んだ。  呼吸が苦しい。  それでも壮史さまの指は、ただただやさしく、けれど逃がさない確信を持って進んでくる。  そして、直に――その部分へと触れた。  「あ、っ……嫌だ…っ」  反射的に腰が跳ねる。でも、その動きはむしろ自分から誘ってしまうようで、余計に恥ずかしかった。  「ねえ、こんなに熱い。ほら、びくびくしてるよ」  壮史さまの指が、そっと押し包むように撫でる。  「っ嫌だ、……触れちゃ……っ、あっ、あ……!」  喉の奥がつまって、うまく息ができない。  でも、壮史さまの指は止まらなかった。  指先で包み、撫で、ゆっくりと形を確かめるように扱く。  壮史さまは左手で僕に触れながら、右手で袴の紐へ指を伸ばし、結び目をゆっくりとほどいていく。  「っ、まって……いや、です、壮史さま、本当に、それ以上は……っ」  「ねえ、咲君――もう、限界だよ」  壮史さまの手がゆっくりと離れる。  「……僕が触れるのが嫌なら自分で脱いで。自分で、してみせてよ。いつも、しているみたいに」  僕の身体が硬直する。  「な……何を……」  言いかけた僕の声が、喉の奥で崩れ落ちた。  壮史さまの手が僕の襟元を掴み、ぐいと引き寄せたかと思うと、そのまま彼の腕にすくい上げられていた。  軽いな、と壮史さまは笑う。  「や……やだっ、はなしてください!」  「駄目だよ。まだ、全部見てない」  ベッドの上に僕の身体が落とされる。逃れようのない動きだった。    けれど壮史さまは、すぐには乱暴にしなかった。ただ、僕の足元に座り込むと、瞳を細めてこちらを見下ろす。  「……咲君。君はどんな顔して、どんなふうに自分を慰めてるの?」  僕は頬を紅潮させ、唇を強く噛む。  視界が滲む。羞恥と絶望、戸惑いと怒り、いくつもの感情が交錯して、言葉を失った。  「君のすべてを、僕は知りたいんだ。どんなふうに感じるのか、どこをどう触れば君が僕に縋るのか」  カチ、カチと秒針が静かに響く。 「君の手で脱いで。今、僕の目の前で」  さっき僕に触れた左手を舐めながら、壮史さまはそう言った。

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