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第3話

あと2ヶ月で彼と出会って2年になる。 完全なセフレとなってからは1年半ってところか。 それだけ年がたてば、新社会人22歳も24歳になったわけで…、誕生日が来れば25歳つまりはアラサー突入である。 高堂くんは今年で大学4年生で、大手企業に内定をもらっている。 きっと、あの大きな企業の中で美人のOLとか、なんかそういう感じの人と出会って、結婚するんだろう。 尚更、彼の人生に俺の出る幕はない。 「きょんちゃぁぁあん」 「うるさっ!?」 今日は、きょんちゃんのお店の定休日なので、通話しながらゲームをしている。 忙しい人だけれど、休みの日にたまに俺に付き合ってくれる優しいオカマなのだ。 きょんちゃんも、2年も経てば独立して自分のお店を構えるママになって、さらに忙しそうだけれど、バイの泥沼に沈みゆく俺の話を聞くために最近は時間を作ってくれる。 「俺もう今年でアラサーに突入するんだ。 高堂くんは社会人になるし…、どうしたらいい?」 「先週どころかずっと言ってるけど、さっさと告白して散りなさいって」 「だって、人生で一度も告白したことないんだよ!?無理!!」 「はぁ~…、グダグダ五月蠅いわねぇ。 まあ、アタシも色々考えてきてあげたから言うけど、少しずつ彼氏づらすればいいんじゃない?」 俺はまさかそんな提案をされると思わず、無言になる。 彼氏づらって何? 「えっと…、つまり?」 「鈍いわね。少しずつ、恋人ムーブをかまして、嫌がられたらもう脈ナシってことで諦めるのよ」 「いや、恋人いたことないから分かんないよ。 何?恋人ムーブって」 「あ~、ほんと、恋愛童貞ってほんと面倒臭いわ~。 例えば、『今日泊まってっていい?』とか『外でデートしたい』とか、セフレならウザいっていう提案をしていくの」 「ええ!?そんなこと…」と、言いかけて口を噤んだ。 確かに、告白が出来ないならそうやって確かめていくしかない…、か。 でも、お泊りの時点で断られそうではあるけど。 「そう…、だよね。そのくらい言わなきゃ変わんないよね」 「そうよ。そろそろ男見せなさい。 そいつよりあんたが年上なんでしょ」 「うん、そうだね」 と、俺がうんうん頷いていると、きょんちゃんが「あ!」と声を漏らした。 「そういえば、そろそろアタシの店が1周年記念だから来週からはちょっと時間作れそうにもないのよ」 「そうなの!?おめでとう! きょんちゃんのお店、行ってみたかったな~」 「あんたみたいな20代ピチピチのゲイがうちみたいな田舎のオカマバーに来たら、オネエのおっさんどもに揉みくちゃにされるわよ?」 俺はドラァグクイーンのような濃いメイクのおじさんたちに囲まれる自分を想像して身震いした。 それは怖い。 「10年後とかにしようかな」 「10年後、うちの店がある保証はないけど、そうしなさい。 それは別として、来月末に東京に行くから泊めなさいよ」 「え?」 「なによ。嫌なの?」 「ううん!初めてきょんちゃんに会えるから楽しみ!」 「…、あんたねぇ、もっと危機感持ちなさいよ」 「え?だって、きょんちゃんはネコでしょ?」 「それはそうだけどさぁ…、ま、いいわ。 泊まるかは別として飲みに行きましょ」 「うん!近くなったらDM送ってね」 「はいはい」 やっときょんちゃんに会える!と、俺はワクワクした。 どうやら、こないだ東京のゲイバーのママが、九州旅行の時にインスタできょんちゃんの店を見つけて遊びに来たらしい。 くそ高いシャンパンを5本も入れてくれたからお礼に遊びに行くんだと。 いいなぁ、と言ったら「10年後あんたにパートナーがいなかったらウチで雇ってあげる」と言われた。 そんな人生もありだよね。女装は興味ないけど。 っていうか! 俺にはめちゃくちゃ気の重い課題を出された。 きょんちゃんに会う時までに、高堂くんに恋人ムーブをかまし、どんなもんか報告しなくてはならない。 めちゃくちゃ憂鬱なんだけど… でも、やるなら早めがいいよね。 99%振られるってわかってるから、きょんちゃんに話すころには少し失恋の傷が乾いていた方がいい。 しかし、負けると分かっている戦のなんと気詰まりなこと…

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