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第15話
デートに行き、泊まりなしで帰宅したその日。
俺はきょんちゃんに「別れるかも」とだけの、ザ・どしたん話聞こか?待ちDMを送った。
きょんちゃんからは「は?いきなり何?」と返事が来て、「別れるかもなの!」と送ったら「25時」とだけ返事が来た。
これはきっと、25時には通話ができるということだな!と思った俺はそれまで待った。
それで、きょんちゃんから着信が来てすぐに事の顛末を伝えて「きょんちゃん、これってつまり、倦怠期だよね?」と締めくくった。
「はぁ〜〜〜〜」と、きょんちゃんがクソ長溜息を吐く。
「ほんと、はぁ〜だよねぇ」
と俺が相槌を打つと
「これはあんたへの溜息よ!
そもそも、今の今まであたしのこと無視しておいてぇ?急に『別れるぅ』みたいなDMを寄越して?電話するなり自語りとはねぇ。
あんた、あたしのこと舐めてる?」
と、ズバズバ切られた。
だってさぁ!伊織くんは最初、連絡取るなとか言ってたし、俺は色々あって混乱してたし…、
と、とにかく!色々あったんだもん!
それでそう言うと
「あたしはあんたらが付き合ったことすら知らなかったわよ」と言われた。
そ、そうだったかもぉー!?
「でもさぁ、もう別れるかもしれないんだよ?」
俺がそういうと、彼女はまた溜息を吐く。
「まあ、あんたたちをよく知らない人に「これって別れる?」って聞かれれば、9割9部『別れそう』と答えるわね。
ノンケなら尚更、良い女でも見つけて、そっちに行っちゃってるでしょうね」
もう、そうとしか考えられないようなきょんちゃんの推理に、俺は心が砕けそうになる。
そんなぁ、女の子に敵うわけないじゃん…
「うぅ…」と俺が声を漏らすと
「泣くんじゃないわよ、鬱陶しい」と
きょんちゃんに一蹴される。
「だから、あんたらを知らないやつならって言ったでしょ!
私が思うに、高堂くんとかいう男がそんなことするようには思えないのよね」
「え!?いやいや!
きょんちゃんも伊織くんの顔見たでしょ?
あれを放っておく人はいないよ!?
よりどりみどりでしょ!」
俺がそう反論すると、「あんた、イケメンが全員浮気すると思ってんの?」と声を尖らせた。
「深夜に酔っ払いのゲイを迎えに来るような男が、そんなことするとは思えないわ。
それに、あんた酔っ払ってたから知らないだろうけど、あの子、あたしのことすっっごい睨んでたんだから。
あんな執着心やばい奴が、そう簡単に心変わりするとは思えないわ」
「伊織くんは100%浮気しない?」
俺が最後の駄目押しでそう聞くと
「…、人の心は移りゆくものよ」
と、言われた。
「いや!するんじゃん!浮気!!!」
「知らないわよ。あんたの方が、そいつのことよく知ってんでしょうが。
『やりたーーい♡』って誘えばいいじゃない」
「言えないよ!そんなこと!」
俺が駄々を捏ねていると、きょんちゃんはついには舌打ちをする。
「ほんと、いつまでもウジウジウジウジ…。
私に電話してる暇があるなら、確実にセックスが出来る誘い方でも勉強すれば?
あたし、明日も出勤なんだわ。じゃあね」
「えっ!ちょっ!?」
という俺の制止を無視して電話が切られた。
掛け直したけれど、ブロックされたみたいで繋がらない。
ひ、酷い…、ブロックすることないじゃん!!
俺は枕に突っ伏して少し泣いた。
確実にセックスできる誘い方かぁ…
俺、ずっと受け身だったしなぁ。
寝ているのを襲って咥えた時は、かなり勇気を出した方なんだ。
でも、勇気を出して誘って、それを断られた時の虚しさを思い出すと足がすくむ。
何か俺にぴったりの誘い方があるかもしれない。
俺は、早速検索エンジンで「セックス 誘い方 簡単」と打ちこむ。
我ながらなんて間抜けな文字列…
でも、背に腹はかえられない。
次、セックスができなかったら…、いよいよ俺たちは別れの危機だと思う。
だって、俺はともかく、伊織くんは22歳だよ!?
性欲がないわけない!
恋人が目の前にいて、それをしないってことは
確実に発散先があるってことじゃん!
俺で発散して欲しいのに!
他にあげる暇があるなら、俺にくれよ!
そんなことを面と向かって言えないから
俺はこそこそと検索するんだ…
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