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第20話※
色々と嬉しいことが知れて舞い上がっていた俺は、伊織くんの上に乗ったまま唇を合わせた。
俺からキスしたのなんて、これが初めてかもしれない。
夢中で吸い付いていると、肩を掴まれて体を離された。
俺は不服な顔をして彼を睨み上げる。
「ちょ、ちょっと待って」
「何?まだ何かあるの?」
「久々だから…、酷くしちゃうかもしれない。
いったん抜いてきた方が…」
なんて、伊織くんが勿体ないことを言う。
自分でするときは洗浄が面倒なので、一回の自慰で満足を通り越して自分を責めたてるようにしている。
それを伊織くんがしてくれるなら本望だ。
「慣れてるから大丈夫」と言ってもう一度、唇を寄せようとすると、天と地が反転した。
「へ?」
俺は天井を見上げて、間抜けな声を出す。
どうやら、押し倒されたらしい。
「慣れてる?…、こんな時に他の男の話?
良い度胸してるよね、文くんは」
地を這うような声に、俺の本能がヤバイと危険信号を出す。
他の男って何!?
と思ってすぐに、先ほどの自分の発言を思い出し、誤解させていると気づいた。
「え、ちがっ!?他の男とかじゃな…」
と言いかけて、手で口を塞がれた。
「言い訳は聞きたくない。
文くんの家、壁薄いんだよね?
せっかく手加減しようとしたのに…、声押さえるの頑張ってね」
そう言って伊織くんはにっこりと笑った。
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「もう無理」とか「いいから挿れて」と懇願しても、伊織くんは許してくれず、抵抗しようにも声が出るので口を塞ぐので精いっぱいだった。
普段の伊織くんの愛撫が優しすぎたためか、俺は彼を侮っていたらしい。
もはや、体に力が入らなくなった俺は、四肢を投げ出して仰向けに転がった。
「他の男はここまで満足させられなかったよね?」
伊織くんが、未だに怖い笑顔のまま俺に問いかける。
他も何も、伊織くん以外としたことがないのに…
「ち、ちがくて…」と絞り出した声は疲労の為か掠れていた。
「言い訳は良いって。体で覚えさせるから」
そう言って彼は俺の体を反転させ、四つん這いにさせようとした。
が、俺の腕に力が入らず、ぺしゃりと上体だけ倒れてしまう。
「口塞げなくなるけど、いいか」
そう言って彼は俺の腕を引き上げた。
いわゆる、ロールスロイスのような体位だ。
こんな状態で突っ込まれたら、絶対に大きい声が出る。
「ま、待って、これダメっ!~~~~っ!!!」
ドチュっと音が出るほど、一気に奥まで突き上げられ、俺は声にならない声が出る。
このまま動かれたら不味い。
そう思うのに、抵抗するすべがなく、俺は突き上げられるたびに
「んぉっ、ああっ、あ”っ」と体をのけぞらせて喘ぐ。
「お隣に聞こえちゃうよ?」とのんびりした声で伊織くんが言う。
「やだぁ、やめてっ」とお願いするも、奥まで突き上げられ、ぐりぐりと先端を押し付けられる。
「んあぁぁぁ!!」と長く、絶頂の声を上げてしまい、隣の人が壁をドン!と叩いたようだ。
「っ!?」俺はびっくりして硬直した。
その瞬間に、お尻に力が入ってしまい、伊織くんも小さく声を上げて俺の中に出した。
それから、すぐに硬度を取り戻した伊織くんが、必死に声を押し殺す俺を責めたてて、2回線が終わるころには、俺は指一本も動かせなかった。
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「最悪~、もうここ住めないんだけど!!」
翌朝、今回ばかりはお互い動けず、ベッドに横たわったまま、伊織くんを睨む。
「うん、じゃあ同棲する?」
満更でもなさそうに伊織くんが言う。
そのにこやかな顔を睨み、首を横に振った。
「社会人としてご家族への挨拶もなしに同棲なんてできない」
しかも、俺が女性ならいい。
同性で、なんて伊織くんのご家族が泣いてしまうかもしれない。
「律儀だなぁ。じゃあいつ行く?」
「え、どこに?」
「親への挨拶だよ」
「え、本気!?」
「文くんがそうしないと同棲しないって言うなら、行くしかないじゃん」
「…」
伊織くんの行動力には、たまに驚かされる。
ご家族に許してもらえる前提なのも凄いし。
「ねえ、いつ?俺んちは、事前に言ってくれればいつでもOKだよ。
来週とか?」
「えぇ!?無理!!無理無理!!
そんなにすぐとか俺が無理だ。
普通に追い出されても文句言えないよ、同性同士とか」
「俺、彼氏いるって言ってるし」
「!!?」
本当になんというか…、伊織くんの行動力ってすごいと改めて思わされた朝だった。
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