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第22話

ベッドでうつぶせになり、携帯ゲームに興じていると、「文くーん!」と風呂上がりの伊織くんが俺にダイブしてる。 「うっ」と、俺は呻く。 酔った伊織くんは子供みたいなことをたまにする。 それはとても微笑ましいんだけど、図体は成人男性なのでそこは理解した方がいいと思う。 「重い!!死にかけた!!」 俺が文句を言っていると、ゲームオーバーの音楽が鳴り、ゲームの中の俺が死んだ。 地味にノーミスクリア目指してたのに… キッと伊織くんを睨むが、彼はどこ吹く風で「文くんだ~」と俺の背中に頬擦りしている。 「の、飲み会、楽しかった?」 と、俺はそれとなく聞く。 仲良くなった女の子とかいたらどうしよう… 「んなわけ。全然つまんなかった。 なんで俺の会社に文くんいないの?」 そんな伊織くんの回答に、俺はホッと息を吐きつつも、 「入れるならとっくに入ってるよ!」 と、半ギレで返した。 っていうか、入れてくれよ。 もうブラック企業辛すぎる… 前は比較対象がいなかったから、どれだけ残業があろうが、その割に給料が低かろうが、まったく気にしなかったのに。 伊織くんの会社の話を聞くと、俺何やってんだろって虚無る。 「来てよ~」と、なおも俺に抱き着く伊織くんに「俺じゃ無理だろ」と返す。 全く…、無理なことは言うもんじゃねぇぞ。 ゲーム機の電源を落としてサイドボードに上げると、「さ、寝よう」と俺は部屋の電気を消した。 伊織くん、結構酔っているみたいだし、無理せずに寝よう。 「え~…、金曜日なのに」 「…、だって伊織くん、かなり酔ってるじゃん」 不服そうな伊織くんを宥めるが、「する!したい!…、だめ?」と、駄々をこねてお願いしてきたので「別にいいけど」と応じる。 お互い、金曜と土曜は次の日に影響がないので、暗黙の了解で”ヤる日”になっていた。 だから、後ろは念のため準備しているけど…、伊織くんが大丈夫なのかな? 伊織くんが鼻歌でも歌いそうな上機嫌っぷりで俺の服を脱がせていく。 いたるところに唇を落としながら。 そんな甘い雰囲気と、俺の体を知り尽くしたような巧みな愛撫で、俺もたちまち盛り上がってしまう。 そろそろ入れて…、と言いかけたところで伊織くんの動きがピタリと止まる。 「あ、あれ?伊織くん?」 これはもしかして…、NETERU~~~!! すっかりと寝落ちして重くなった伊織くんをどかす。 もう!その気にさせるだけさせて、さっさと寝るなんて酷い! と、思いながら俺はトイレで抜く。 少し後ろが寂しい気もしたけれど、流石に1人でする気にはなれず、すやすや眠る彼の隣に体を差し込んだ。 不意に、伊織くんの反対側に置かれている携帯が目に入る。 あれ、寝てる間に踏んじゃったら痛そうだな… そう思って携帯を持ち上げて、ゲーム機の隣に置こうとした。 その拍子に画面が光った。 Mayu.A『高堂くん、今日はありがとう!…』 ありがとう、以降も何かメッセージが続いているようだが、ロック画面からでは確認ができない。 俺は、見てはいけないものを見てしまった、と思い、慌てて画面を伏せてゲーム機の隣に置いた。 ただのお礼のメッセージだよね! でも、個人の携帯の連絡先、交換する必要ある!? いや、でもでも、まだ新入社員だし、社用携帯とか持ってないよね! とグルグル葛藤をする。 が、頭が疲れてきて俺も枕に突っ伏した。 もう、寝ちゃおう。 明日も気になってたら、本人に訊こう。 どうか、伊織くんがずっと俺の彼氏でありますように… ------------ 朝起きると、不服そうな顔で伊織くんが俺の顔を眺めていた。 俺の寝顔、良いものではないと思うけど… 「おはよう」 と、俺が視線に困り、なんとか挨拶を捻り出すと、伊織くんは「…おはよう」とムッスリして答えた。 「え、どうしたの?」 「最後までしてないよね」 「う、うん? 伊織くんが寝ちゃったからね」 「起こしてでもシてよ! 善がり狂う文くん見たかったのに〜!」 「よっ!?善がり狂わないし!!! どうせあれだけ酔ってたら覚えてないでしょ」 「俺は文くん関連のことは忘れない」 「…、はいはいそうですか。 どうせ土曜日なんだからリトライすれば?」 「うん!!!」 暗に今晩ヤろうって言うと、伊織くんは嬉々として頷いた。 機嫌が治ったようで何より。 くだらない話のおかげで、俺は昨夜の伊織くんに来たメッセージのことを忘れていた。

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