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第15話 シャイニングムーン
「ふう。やっとひと段落ね。ちょっと水分補給」
ダグはがぶがぶと水を飲み干すと、くぅーっと息を吐いた。その隣で秀治はちびちびと水を飲む。ひどく疲れた。
時刻はあっというまに午後九時を回っていて、店内はゆったりとした雰囲気が流れ出している。少し息がつけそうだ。この時間帯はフードの提供よりもドリンクの注文が主でカラオケで働いたことのある秀治は、昔の感覚を思い出すように酒を作っていく。カルアミルクにジントニック、ブラッディーメアリーなんかも出た。洒落た酒を頼む客が多いんだなと思いながら作っていると、フッと店内の照明が落ちる。停電かと思ってホールを見ると、徐々に光が輝き始める。
「え……」
店内に魅惑的なラテン音楽が流れ始め、先程とは空気が変わったことに気づいた。なんだ。一体なにが始まるんだ?
「本日はシャイニングムーンにお越しいただきありがとうございます。魅惑的な夜のショーをお楽しみください」
あれ。これさっきのアレンとかいう人の声だ。気づけばホールスタッフの半数が消えていた。彼らは一体どこに?
「あー言うの忘れてたね。うちは夜九時以降はストリップショーも兼ねてるから」
「えっ?」
ストリップ? ショー? 聞き慣れない言葉に狼狽えていると、アレンが店内奥のカーテンから姿を現した。秀治はその格好にどぎまぎとする。大きく胸のはだけたベストに、下着のように短いショートパンツ。もはや裸と変わらないではないか。
アレンは秀治の視線に気づいたのか挑発するような目つきで指をくいっと曲げる。体を鞭のようにしならせ、客たちの間を縫うように歩く姿に秀治は目を丸くした。
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