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第19話 『シュウ』新しい名前

「おまえの命は俺のものになったんだ。勝手に死ぬことは許さない」  何を言ってるんだ。ほんとうに。秀治はこの意味不明なことを言い続ける降谷という男が嫌いでたまらなかった。勝手に助けて勝手に生かし続けるなんて、どうかしている。人助けのつもりだろうか。 「今日からおまえはキャスト用の寮で生活しろ。その腐り切った根性を叩き直してもらえ」 「は? 俺の家は?」 「そんなもの大家に話をして解約した。持ってくるような荷物もなかったろ。そこの寮は家具家電付きだから安心しろ。前よりまともな生活ができるはずだ」  完全に馬鹿にされている。秀治はなにか反撃しようと口を開きかけたが、降谷のぞっとするような眼光に負けて目線をそらした。この男はたびたび人を殺すような目つきになる。 「俺から逃れたいんなら、ここでまっとうに仕事をして金を貯めることだ。そしたらどこへでも逃げればいい」  降谷はつまらなそうな顔で言い終えると踵を返してロッカールームの外に出て行った。呆然として壁に背を預けていると、苛立ったような声で名前を呼ばれる。 「シュウ。何してる。ごねても無理矢理にでも寮に連行するぞ」  シュウ。新しい響き。 「シュウって何。あだ名のつもり?」  今夜寝る場所もなくなり仕方なくその寮とやらに行くために降谷の後ろを歩きながら聞く。降谷はそんな秀治を一瞥すると大きくため息をついた。 「おまえの新しい名前だ。今日からおまえは寿秀治じゃなくて、ただのシュウになる」  いつのまにフルネームを知られていたんだろう。そんな疑問をよそに降谷はずんずんと大きな歩幅で歩いていく。小走りしないと置いていかれてしまうスピードだった。

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