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第23話 お酒とマカロニアンドチーズ

 喉を通る酒がこれほどまでに美味しかったなんて、と秀治は目を見張る。自殺するために多量に飲んでいた頃とはまた違う味がした。なんというのだろう。誰かと一緒に飲む酒は少し辛くて甘い気がする。一日の仕事の終わりに飲む酒がこんなに身に染みとおるなんて。 「シュウはさ、ストリッパー初めてなの?」  首を傾げてクインに聞かれ、飲んでいた酒を口からこぼしそうになった。危ない……。 「俺はストリッパーじゃない。厨房で働くことになってる」  ええーとクインが大袈裟に反応する。その顔には嘘つくな! と書いてある。 「もったいないなぁ。こんなに可愛いヤマトナデシコが踊らないなんて。ていうか、蓮さんも蓮さんだし。あんなに怒ることないじゃんね」  クインは酒を豪快に飲み干しながら次の缶を開けていく。こんなにハイペースで大丈夫なんだろうか。 「別に、怒られるのには慣れてる」  まずい。少し暗い話になってしまったか? とクインを仰ぎ見ると驚くほど優しい顔をしていた。 「僕も初めの頃はダグにもアレンにも怒られっぱなしだったから、わかるよ」  少し遠い目をしてクインが漏らす。その目は遥か遠くを眺めているように見えて、少し心配になった。 「でも、今ではアレンも抜いて一番になったし、これから頑張ればどうにでもなるよ」  酒を煽りながら言うと、もっと飲んでと言うように缶を押し付けてくる。強引な奴だなと思いながら秀治も二個目の缶に手を伸ばした。 「お二人さんお酒もいいけど、俺の料理の分の腹も空けておきなよ」  よいしょ、と言ってアレンが皿に乗せた料理を持ってやってくる。アメリカの家庭料理の鉄板、マカロニアンドチーズが皿に並々と盛られている。香ばしいチーズの香りに腹がぎゅるると鳴った。それを聞きつけて二人が笑う。楽しそうに、頬を緩ませて笑う。こんな光景の中に自分がいることが信じられなくて、秀治は少し目を離した。

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