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第33話
「嫌だったら、頭叩いていいから」
唯斗はそう小さく漏らすと、秀治の胸に舌を這わせてくる。むずむずとした刺激が背中に流れる。不思議と不快感は覚えない。脳裏にちらつく母親の姿をかき消して今に集中する。なんで抵抗しないんだろう俺。襲われてるようなもんなのに。なんか、嫌じゃない。もっとして欲しいみたいな……。
胸に湧き上がる不思議な気持ちと向き合いながら、体の変化にゆっくりと気づき始める。
「っ!」
秀治が息をのむのが伝わったのか唯斗は上目遣いでこちらを見上げる。その薄茶色の瞳が綺麗で、見とれてしまった。
「そんな目で見られると困るな」
少し照れくさそうに頭をかいた唯斗は舌先を窄めて秀治の胸の飾りを舐める。初めて触れられるそこはまだ鈍感で、熟れた桃色のままだ。ちろちろと熱い舌で舐め上げられて、だんだんふわふわと腰が浮くような気分になり頭を振る。感じるはずがない。こんなところ、感じるはずが──。
「ひっ……」
強い電流が流れたみたいに体が波打った。それを見逃すはずもなく、唯斗がここぞとばかりに攻めてくる。くすぐったさと気持ちよさの狭間に秀治はいた。
「も……だめ……」
はあはあと息を荒げる秀治を見て、唯斗はそっと胸から顔を離してくれた。十分に舐められ続けたそこはてらてらと妖しい光を放っている。
「今日はこのへんで終わりかな」
腕につけた液晶時計を見ながら唯斗が呟く。身なりを整えると、もう一度包み込むように腕を回してきた。
いつのまにか店内の照明が明るくなって、人もまばらになっていた。嬌声はどこからも聞こえない。布擦れの音だけがそこかしこから聞こえるだけだ。どうやらお開きの時間らしい。
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