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第43話

 瞬きもせず見てくる降谷の視線に耐えかねて目をそらす。ボクサーパンツ一枚という心細い格好で立ち尽くしていた。顔を伏せて黙りこくっていると降谷が立ち上がった。ああ、襲われるんだ。そう思ってぎゅっと目を閉じる。唯斗さん、とここにいない人の名前が浮かんだ。まだ一度しか触れ合ったことのない男に縋っている。それがみっともなくて自分で笑えてきた。不意に、降谷が秀治の肩に手をかけた。ビクリと肩が大袈裟に跳ねる。どくどくと心臓の鼓動がうるさいくらいに早まっていく。 「少し肉はついたか」  そう呟くと腹のあたりを撫で回される。想像よりも熱い手のひらに驚いて目を見開く。じわじわと腹、胸、背中を撫で回されて体に熱がこもっていく。 「わっ」  ぎゅむ、とボクサーパンツの上から尻を揉まれ声が出てしまう。しかしそんな秀治の反応をよそに、ぎゅむぎゅむと尻や太ももを揉んでいく降谷に抵抗したくてもできなかった。その手が熱くて心地よかったから。この手で抱きしめられたらきっと溶けてしまうだろう。そんなことを夢想しながらされるがままになっていると、やっと降谷の手が秀治の体から離れた。 「ストリッパーになりたいのか」  唐突にそんなことを聞いてくる降谷にどぎまぎとする。まさかクインが話したのだろうか。案の定、秀治の予想は当たっていたらしく降谷がふっと鼻先で笑う。 「クインから聞いた。おまえにはストリッパーの素質があると」  だから見定めてやる。と、意味深な言葉をこぼして降谷はソファにどかっと足を広げて座り込んだ。 「俺を魅了してみろ。そしたら、考えてやる」  嘘だろ? カッと身体中に火花が散るように熱くなる。

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