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第50話
翌日、またあの日がやってきた。午後五時の開店時間と同時にキャストがどっとシャッターを下ろした店内に入り込んでくる。秀治はクインとアレンに無理やり手を引かれて厨房に入った。
「絶対来るから! シュウはカウンターで待ってればいいよ」
うんうんと満足げにアレンが頷く。今日は店の定休日。秀治にとっては二度目のXデーだ。どうしてまたこの日に店にやってきたのか。それは二時間ほど前に遡る。
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「うーん。悪くはないと思うんだけど、なんか物足りないんだよね」
アレンは眉をひそめて秀治にそう言った。秀治は息を荒げながら困ったようにクインを見る。
「なんかねー色気がないんだよねぇ。なんでだろ」
クインもほとほと困ったというように眉をひそめている。二人にダンスのレッスンを受けていたのだが、どうにも色気に欠けるらしい。特に、性行為の真似事の振り付けになるとぎこちなさが丸見えらしいのだ。
「もしかしてさ、秀治って童て」
ぎゅむ、とアレンの口を塞ぐ。クインはへぇとにんまり笑ってくる。
「なるほどねぇ。だからウブウブなんだシュウ」
ウブウブってなんだよ、とクインを軽く睨む。アレンは苦しいよと言って秀治の手を引き剥がした。案外力が強いものだから軽く振り払われてしまう。
「蓮さんの審査って来月なんでしょ。これじゃあOKはもらえないよ」
クインがクッションを抱きしめながら言う。アレンも苦笑いを浮かべたままだ。
「初めてステージに上がったときは、ウブウブながらも恥ずかしさ満開で可愛かったのにね」
「……そうなのか」
かれこれ二時間もレッスンを受けていたので体の節々が痛む。二人のレッスンは結構過酷で、最近筋肉痛と毎日静かな戦いをしているほどだ。
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