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第54話 R18
「最後にこっち」
「ん……」
唇をちゅっと音を立てて吸われる。ふにふにとした感触に胸が締め付けられるようだった。降谷とは違う、拓馬とも違う。壊れものを扱うようなキスに心がほぐれていく。
次第に秀治からもキスをねだるように口付けると、唯斗は嬉しそうに笑った。その笑顔が眩しくて、きらきらと輝いていて秀治は目を背けることができなかった。今たしかに、俺はこの人の瞳の中にいるんだ。俺だけを見てくれる人がいるんだ。そう感じるたびに、胸がきゅうっと締め付けられていく。心地いい。この人とのキスは俺を安心させる。このままずっとキスだけしていたい。
ゆっくりと口を離されて物足りなさを感じていると、唯斗が秀治の髪を撫でた。慈しむようなその手のひらに擦り寄ってしまいたくなる。
「もう少し先に進んでみる?」
迷わず頷いた。顎を持ち上げられ、薄くて形のいい唇が近づいてくる。
「……んっ」
熱く蠢く舌に口内を荒らされる。嫌な気はしない。むしろ、もっと犯してくれとさえ思う。唇も舌も溶けてしまいそうだった。息が上がる。どうやって息継ぎをしたらいいんだろう。唯斗の舌はどんどん秀治を追い詰めていく。歯列をなぞり、上顎をざらりと舐めていく。身体がピクピクと震え出す。あまりの強い快感に身体が浮かび上がりそうになり、必死の思いで唯斗の背中に手を伸ばす。
「っ」
唯斗が小さく息を漏らしたのを聞いて全身が喜ぶ。大人のキスって、こんなに気持ちがいいものなんだと心の底から感じた。苦手意識のあった行為も今の秀治には楽しむ余裕さえあった。もっと深く繋がりたい。この人となら。そう思って身体が勝手に唯斗を抱きしめる。
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