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第61話
途端、カッと照明弾が砂漠の向こう側から打ち上げられ夜間コープをつけていた目が白い閃光にさらされる。急いで外し、目を暗闇に慣らそうとしたところで、爆発音が響いた。近い。五十メートル以内に敵がいるのは確実だった。隣のザックの物見台から銃撃と薬莢が転がる音が聞こえ出す。
「レン。一時の方向だ。数が多いぞ」
ザックにぴしゃりと声をかけられ、降谷の腕にも緊張が走る。本格的に戦闘に入りそうだ。
「二部隊、無事か」
無線の向こうから隊長の声が聞こえてきた。降谷はボタンを押して返答する。
「二部隊、無事です。敵の姿あり。戦闘中です」
しばらく間があってから、隊長の声が耳に入ってきた。
「戦車隊も許可する。朝日が昇るまでに打ち払え」
「了解」
ガガガ、と壁が引かれる音が下方から聞こえてきた。戦車を出すらしい。ちらちらとライトの光も見える。このときが一番危険だ。壁を開いた瞬間に敵の総攻撃が始まるかもしれない。降谷は目を細めて陰の方向に弾丸を放った。反動で肩が震える。遠くから風に乗って悲鳴が聞こえてきた。壁の外からではない。内地からだ。突如非常事態を知らせるアラームが鳴り響く。ウオオオオンと何度も響くそれは狼の遠吠えのようだった。すぐさま無線の音を拾う。
「内地にて敵の姿あり。戦闘中につき、全兵士に夜間の武装を許可する。敵を殲滅せよ」
逃げ惑う人々の群れを眼下に収めながら、降谷は砂漠の方向を見やった。陽動作戦の可能性もある。注意深く一時の方向を見ていると、背後で物音がした。
「ザック……」
こめかみに銃をあてがわれる。下卑た笑いを浮かべるザックに降谷は両手を上げて向かい合った。
「おまえは悪くない。ただ真っ直ぐなだけだ」
ザックの言葉にごくりと唾を飲み込む。これが俺の死に際かと遠くの空を仰ぎ見る。少しの動きも気に入らないのかザックはぐりぐりと銃口を押し付けてきた。
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