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第65話

「さっそく、君は今日空挺部隊の戦闘機に乗って最前線ブリャタス地帯に行ってもらう。荷物を揃えて待て」 「はい」  テントから出るとそこにはジャルウの姿があった。少し気恥ずかしそうな顔でよう、と手を挙げる。 「なんだ。おまえも異動か」 「違う。おまえの異動を祝いにきてやったんだ」  しどろもどろになりながらジャルウが言う。こいつ寂しがってるのか。荷物を詰め込みながらそんなことを考えた。笑える。こいつとは気が合わないとばかり思っていたのに。 「これやるよ」  また食糧庫から盗んできたのかと一瞥すると違うぜと笑ってくる。 「おまえは俺の兄弟だ。生きて帰ってこい」  なにかのストーンだろうか。藍色の光を放つそれを手に取る。 「何年か前にまだここが市場や人で溢れかえった時に買ったお守りだ。俺はもう一つ持ってるから、おまえにやる」  鼻を啜りながらジャルウが手渡してくる。強引に。 「じゃあな。相棒。おまえとの喧嘩楽しかったぜ」 「ああ」  テントを出るときに男泣きが聞こえてきたのを知らないふりをして戦闘機に向かった。藍色の石を硬く握りしめて、前だけを向いて、この地の匂いをめいっぱい吸い込んで。

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