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第83話
「うわ……すごい」
ホテルのルームキーをもらいにフロントに向かった唯斗を見つめながらぐるりとロビーを見渡す。ガラス張りのドーム型のロビーできょろきょろとしていると、唯斗が声をかけてきた。
「そんなに喜んでくれるの?」
肩を抱いてエレベーターに乗り込む。外の景色が一望できるようにここもガラス張りだった。ぐんぐんと地上から離れていく様に見入っていると、ポーンとエレベーターの到着音が響く。こっち、と手を引かれ最上階の一番角の部屋に案内された。
「……」
驚くあまり声が出ない。秀治はホテルというよりマンションのような造りのインテリアを見て絶句する。こんなに素敵な場所で唯斗さんとしちゃうんだ。そう思うと胸の高まりは止まることを知らない。心臓が口から出てしまいそうなほど緊張していた。
「そんなに硬くならないで。まずはお茶でもしよう」
優雅に猫足の四脚に腰を下ろすと、アールグレイだろうか。紅茶を淹れてくれた。唯斗の正面の椅子に腰を下ろしふうふうとカップに口をつけながら熱さを和らげようとする。唯斗はそれを微笑みながら見ていた。
「ちょっとお風呂溜めてくるから」
しばらくして唯斗が席を立つ。テレビをつけてくれたけど、内容が頭に入ってこない。足をクロスさせながら唯斗を待つ。スーツを脱いでシャツになった唯斗を見てごくりと唾を飲み込んだ。かっこいいと素直に思った。
「ちょっとソファでいちゃいちゃする?」
悪戯っ子のような笑みで唯斗が秀治の肩に手をかける。緊張をほぐそうとしてくれているのがわかって、胸が高鳴る。こんなに大切にされている。それがいまだに信じられない。左手首を隠しているシャツの袖をきゅっと握る。見られて引かれてしまったらどうしようという不安がまだ心の中に渦巻いている。
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