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第107話 後悔の足音
「ねぇねぇ、唯斗さんとどうだった?」
クインがむふふっと笑いながら秀治の肩をつつく。日曜の仕事終わり。いつものように酒とつまみをコンビニで調達して秀治の部屋に集まると下世話な話に花が開く。アレンもじっと秀治の言葉を待っている。がりがりと頭をかきながら、秀治ははにかみながら言った。
「シたよ。最後まで……」
おおー! と二人が歓声をあげる。クインに至っては秀治の背中に抱きついてくる始末だ。
「これでシュウも処女喪失だね!」
なんか日本語間違ってないか? と一瞬思ったが、二人の興奮のしように言葉をかける暇もない。
「あのシュウがねぇ」
遠くを眺めるような目でアレンが呟く。
「唯斗さん嬉しかっただろうなぁ」
ぷにぷにとクインは秀治の頬を摘んでくる。やめろよ、と言ってクインの肩をこづいた。
「なにせ初物だからね」
ワインを優雅に飲みながらアレンがぽーっとした顔でふにゃりと笑う。結構酒が回ってるらしい。
「でも、別に恋人とかじゃないと思うし。セフレってやつだよ」
えー! と不満そうな声を二人があげる。
「付き合ってくださいって言えばいいじゃん。好きなんでしょ?」
好き、という言葉に全身が反応する。たしかに唯斗さんのことは好きだけど、付き合うってどんなことかよくわからない。
「僕だって店長には内緒だけど義則さんとは付き合ってるから。ちなみにアレンは六年間拓馬さん一筋だもんね」
おいおいとアレンがクインの口を塞ごうとする。
「付き合ってもいいもんなの?」
ふとそんな疑問がわく。仮にも客とキャストで、それは許されることなのだろうか。
「しょーがないじゃん。好きになっちゃったらさ」
その答えに妙に納得してしまって秀治は唯斗の顔を思い浮かべた。余裕のある笑みでエスコートしてくれる王子様のような男。そんな人と共に時間を共有できるなんて夢みたいだった。
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