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第120話
「おっはよーシュウ」
二日酔いのためかアレンは頭を押さえながら部屋から出てきた。おはようと返事をするが、クインとアレンの目が見れない。あんな姿を見てしまった後ではどんなふうに接すればいいのかわからなくなってしまう。
「昨日のこと怒ってる?」
秀治の姿に異変を感じたのかクインが目を伏せて言う。しゅん、と耳の垂れた子犬のようだと秀治は思う。
「怒ってはない、けど驚いてる」
ごめんね、と珍しくクインが自分から謝ってきた。こいついつもは頑固なのに。
「別にいいよ。俺は性欲に鈍感なだけだから。おまえらは悪くない」
そうなのだ。二人は悪くない。男なら友達と扱き合いなんかをするのも珍しくない。それを知っていても理解してこなかった自分に非があるのだ。
「よかった……シュウに嫌われたかと思った」
ほっとしたようにクインが言う。ぽんぽんとその頭を撫でてやると、擦り寄ってきた。アレンがそれを見て苦笑している。普段の三人のペースが戻ったところで、チェックアウトを済ませた降谷とダグがやってくる。心なしか体が震え上がる。気づかれちゃダメだ、気づかれちゃダメだと手に力を入れる。
降谷はそんな秀治を一瞥すると、すっとその前を通った。昨夜のことが何もなかったかのような反応に胸が痛む。気にしてないんだ。当然だよな。俺は何を期待してたんだろう。謝罪を述べてくるとでも本気で思っていたのだろうか。
新幹線の窓から流れていく景色をぼうっと眺めていると、ダグがそっと声をかけてきた。
「シュウ元気ないけど体調悪い?」
この人ほんとによく人を見ている。秀治は首を振った。
「初めての旅行で疲れただけです」
今晩はゆっくり休んでと優しく声をかけられて、ほっとする。昨夜何があったのかは誰にも知られたくなかった。
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