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第123話
「くすぐった……やめてっ……」
「ほら、笑った。シュウくんには笑顔でいてほしいから」
本気出すよ、と唯斗が悪戯に笑いかける。首筋を舐められて身を捩る。この人はなんてあたたかいんだろう。全身で好きと言われているようで頬に熱が集まる。
「ふふ。簡単な魔法でしょ?」
静かに笑うと秀治の体をそっと抱き寄せる。首筋に顔を埋めて照れくさそうに呟いた。
「ずっと会えない間もシュウくんのことばかり考えてたんだよ。そんな俺の気持ちわかる?」
こてん、と首を傾けて子供がお菓子をねだるように甘えてきた唯斗の背中をぎゅっと掴む。
「俺もずっと唯斗さんのこと考えてた」
言えた。伝えたかった言葉。伝えなきゃいけないと思っていた言葉。抱きしめる腕の力がさらに強くなる。苦しくなって大きく息を吸い込むと、額にキスをされた。ふんわりと唯斗さんの匂いが香ってくる。おひさまみたいな匂いだと秀治は思う。
「ご褒美くれるかな」
甘えるような仕草を見せられて、秀治はうんと頷いた。部屋の空気が一瞬にして甘いものへと変わる。耳たぶを噛まれ、首筋にふんわりとキスを落とされソファの下で焦らすように乱されていく。
「ベッド行こうか」
秀治の胸はけたたましいほどに高鳴っている。握った手のひらにじんわりと汗を感じる。抱いてもらえるんだ。大好きな人に、愛している人にたくさん愛してもらえるんだ。喉元まで歓喜の声が溢れ出してくる。
「好き、好きです。唯斗さん」
逞しい腕に抱き上げられながら、唯斗の胸で何度も呟く。その度に目元を赤くして唯斗は笑ってくれる。
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